研究実績の概要 |
肺腺癌には主にTerminal respiratory unit(TRU)より発生し、AAH(atypical adenomatous hyperplasia), AIS(adenocarcinoma in situ), MIA(minimally invasive adenocarcinoma), 明らかな浸潤癌へと多段階的に増悪する。一方、日本人の肺腺癌のドライバー遺伝子の約半数はEGFR変異であるが、前癌病変であるAAHや上皮内腺癌であるAISにおいても浸潤癌同様な頻度でEGFR変異が見つかることから、初期肺腺癌においてはEGFR変異の他に何らかの別な因子が加わることで悪性化を引き起こすと考えられる。EGFR変異のあるAIS, MIA, 小型浸潤癌においてプロテオミクス解析を行い、これまでにEEF1A2, CRABP2, AK4が進行に伴って発現の亢進があることを見出している。EEF1A2は卵巣がんの発症に重要であることや、遺伝子増幅が報告されており、TCGAデータベースからは肺腺癌においても同様に増幅がおこっていることが示されている。CRABP2はレチノイン酸に結合し、細胞質から核に輸送する働きをもつ。FABP5/CRABP2の発現の比により、細胞の増殖または分化という対極の機能をもつとの報告もある。CRABP2は肺腺癌においてこれまでに報告があるがレチノイン酸と関係や悪性化にどうかかわっているのかは不明である。AK4はミトコンドリアに局在し、AK4 が ATF3 をダウンレギュレートし、転移と関連していることが報告されている。これらのタンパクが初期肺腺癌においてどのように悪性化と関わっているのか、また高発現の原因について調べていく。
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