研究課題/領域番号 |
21K15398
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
臺 知子 筑波大学, 附属病院, 研究員 (20835194)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | eEF1A2 / 肺腺癌 / 悪性化 |
研究実績の概要 |
Terminal respiratory unit(TRU)より発生し、EGFR変異をもつ初期の肺腺癌について、ドライバー変異以外に悪性化に関わっていると考えられる因子として、申請者が初期肺腺癌を対象として行ったプロテオミクス解析の結果から小型浸潤癌/上皮内腺癌の発現差が最も大きかったeEF1A2に着目し、解析を行った。eEF1A2は翻訳伸長因子複合体のサブユニットであり、その主な機能は、アミノアシルtRNAをリボソームに運搬することである。eEF1Aのもう一方のアイソフォームはeEF1A1であり、両者は93%同一のアミノ酸配列を持つが、その発現パターンは異なっている。 eEF1A2とeEF1A1を特異的に検出できる抗体を選択し、TMAを用いて免疫組織化学染色を行った。浸潤性腺癌では、微少浸潤性腺癌または上皮内腺癌に対してeEF1A2の比較的高い発現が観察された。eEF1A2陽性の腫瘍を有する患者は、eEF1A2陰性の腫瘍を有する患者よりも有意に予後不良であった。浸潤性腺癌のうち、充実型腺癌は他の組織型よりも高い発現を示した。充実型腺癌は低分化腺癌の代表的な組織学的サブタイプであることから、eEF1A2の発現は組織学的分化と関連している可能性がある。さらに、lepidic型腺癌における発現率は、上皮内腺癌および微少浸潤性腺癌よりも顕著に高いことが注目された。上皮内腺癌と微少浸潤性腺癌はlepidic型腺癌で構成されていることから、この所見はeEF1A2の過剰発現がlepidic型腺癌(高分化だが浸潤性の腺癌)の段階で起こることを示唆している。結論として、eEF1A2は肺腺癌の悪性化の過程で過剰発現を示し、高発現群は患者の予後が有意に悪いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺腺癌におけるeEF1A2の発現について論文投稿中のため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、論文リバイス中のため、引き続き追加の解析を行い、論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿料を確保するため、次年度に予算を残しました。
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