• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

炎症性腸疾患からの発癌におけるAhRの役割と新規がんマーカーとしての有用性

研究課題

研究課題/領域番号 21K15400
研究機関信州大学

研究代表者

的場 久典  信州大学, 医学部, 特任助教 (10849277)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードAhR / CAD / CAC / SATB2 / DNAメチル化 / GS-II / terminal βGlcNAc
研究実績の概要

Colitis associated dysplasia(CAD)およびcolitis associated carcinoma(CAC)に対するAryl hydrocarbon receptor(AhR)の免疫染色に関して、強度が不十分なため、より強力なポリマー法の二次抗体による再検討を行ったところ、CAD19例中17例、CAC4例中4例でAhRの発現上昇を認め、陽性率が向上した。再検討によりAhRの発現低下例が少数となり低下例特異的な発生機序の検索が困難なことから、予定していたエクソーム解析を中止した。また、バイサルファイトシークエンス法によりCAD, CACのAhRプロモーター領域のメチル化解析を行ったが、シークエンスの解読が困難で明瞭な結果を得られなかった。QubitによるDNAの再定量では分光光度計による測定値の1/10程度であり、テンプレートDNAの量が不十分と考えられた。今後AhR以外の遺伝子のプロモーター領域のメチル化について検索する可能性を考え、バイサルファイト全ゲノムシークエンスによる網羅的解析を行う方針とした。
さらに、Sessile serrated lesions(SSL)およびmicrovesicular hyperplastic polyps(MVHPs)においてterminal βGlcNAcが増加することを示すことができたため(Matoba et al. Pathol Int 2023)、同様の検索をCAD, CACに対しても行う方針とした。terminal α/βGlcNAcに特異的なGS-II レクチン染色では、CAD19例中15例、CAC4例中4例で陽性所見を認めた。terminal αGlcNAcに特異的なHIK1083の陽性所見は認めず、GS-II陽性例にterminal βGlcNAcが存在するものと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AhRの染色条件の再検討により陽性率の向上を認め、AhRのCAD, CACに対するマーカーとしての意義はより強固になった。逆にAhRの発現低下例が少数となり低下例特異的な発生機序の解析は困難となったが、代わりに遺伝子プロモーター領域の網羅的なメチル化解析を行うことで、より有意義な結果が得られるものと考える。また、SSL, MVHPとCAD, CACには胃型のムチンコア蛋白の発現などの類似性があることが知られているが、上記のようにSSL, MVHPで見られたterminal βGlcNAcの増加がCAD, CACでも見られることを示すことができ、ムチンコア蛋白だけでなくその糖鎖修飾においてもこの両者に類似性があることが判明した。この結果はCAD, CACに対する新たな特徴付けを与えるものと考える。多施設共同研究による多数症例の解析についても、倫理委員会の申請は完了し、今後染色を行う予定である。総じて十分な進展が得られたものと考えられる。

今後の研究の推進方策

倫理申請が完了し多施設共同研究によるCAD, CACの症例数の確保はできたため、今後は、AhRなどの診断マーカーや今年度に追加したGS-IIレクチン染色などについて、多数例に対して染色を追加し、最終的な結果としたい。また、遺伝子プロモーター領域の網羅的なメチル化解析を行い、得られた結果に基づいて、AhR, SATB2などのここまで染色したマーカー分子についてテンプレートDNAの量を増加させてバイサルファイトシークエンス法による確認を行い、こちらも最終的な結果としたい。網羅的解析によりプロモーター領域のメチル化を伴う新たな遺伝子が明らかになった場合は、モノクローナル抗体の作成とCAD, CACに対する染色を行い、新たなマーカー分子としての意義を確立することも検討したい。

次年度使用額が生じた理由

最大の理由は、AhRの染色条件の再検討により陽性率が向上し、逆に発現低下例が少数となり低下例特異的な発生機序の解析が困難となったため、当初予定していたエクソーム解析を中止したことによる。これについては、代わりにバイサルファイト全ゲノムシークエンスによる遺伝子のプロモーター領域のメチル化の網羅的解析を行う方針としたため、次年度使用分および本来の翌年度分の予算の一部をこれに充てる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Increased GS‐II lectin binding and SATB2 downregulation are biological features for sessile serrated lesions and microvesicular hyperplastic polyps2023

    • 著者名/発表者名
      Hisanori Matoba, Mai Iwaya, Yoshiko Sato, Noriyasu Kobayashi, Haruka Takemura, Yusuke Kouno, Ayumi Karasawa, Jun Nakayama
    • 雑誌名

      Pathology International

      巻: 73 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1111/pin.13321

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Increased expression of terminal βGlcNAc in Brachyspira sp. in human intestinal spirochetosis2023

    • 著者名/発表者名
      的場久典、岩谷舞、中山淳
    • 学会等名
      第112回日本病理学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi