研究実績の概要 |
担癌患者は血栓症を合併すること多く (癌関血栓症)、中でも静脈血栓塞栓症(VTE)の頻度が高い。静脈血栓塞栓症は、致死的な呼吸循環障害をきたしうる疾患で、その発症病態の解明は喫緊の課題となっている。一方で、人体病理に基づいた報告は極めて少なく、その機序は未だ不明な点が多い。 本年度は、剖検症例を用いた癌関連VTEについて解析を進めた。癌関連VTEでは、約1/3の症例で血栓中に癌細胞が確認された。また、癌細胞が存在する血栓には、多くの症例で腫瘍壊死を伴っていた。血栓中の癌細胞には、種々の血栓関連因子の発現を認めた。癌細胞が組織因子、ポドプラニンを発現することで、凝固反応・血小板凝集を促進し、癌関連VTEの病態に寄与することが示唆された。 本研究成果は、人体病理に基づいた癌関連VTEの病態を明らかとするものであり、学会シンポジウムで発表を行った(第43回日本血栓止血学会 学術推進委員会 シンポジウム, 2021/5/29)。現在論文投稿準備中である。
|