研究課題/領域番号 |
21K15407
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
紅林 泰 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40805123)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 腫瘍免疫 / 微小環境 / 肝臓 / 進行がん / 転移 / 病理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①全ての病期(前癌病変、早期肝細胞癌から切除不能進行肝細胞癌まで)における肝細胞癌の免疫微小環境の病理学的分類の確立と、②各免疫微小環境の成立機序の一端の解明である。2023年度(4年計画の3年目)では、下記の検討を行った。 1) 前年度までに、三次リンパ組織(TLS)とその前段階の構造と考えられるT細胞集簇巣(T cell aggregate, TA)にstem-like T細胞が多く集積していることを明らかにした。今年度は、その他の形質を示すT細胞の空間的な分布について検討し、stem-like T細胞以外の活性化T細胞はTA/TLSの外側に多く見られること、また、CXCL13陽性T細胞がリンパ形質細胞浸潤と関連していることを明らかにした。CXCL13陽性T細胞にはexhausted CD8 T細胞、follicular helper T (Tfh)細胞、その他のCD4 non-Tfh細胞が含まれ、濾胞外に存在するnon-Tfh CD4 T細胞の割合が最も高かった。 2) 進行期肝細胞癌の治療前腫瘍生検検体(計65例)について、前年度までに分子生物学的特性ならびに腫瘍微小環境に関する検討を行ったが、今年度は治療後の経過との比較、検討を行った。その結果、リンパ球浸潤が少なくTAの形成も認められない最もImmune-coldな一群では、進行期肝細胞癌に対する複合免疫療法後の予後が有意に不良であることがわかった。このようなImmune-coldな免疫微小環境を有する腫瘍は外科切除可能な臨床病期の低い腫瘍よりも、進行期の腫瘍において多く認められ、進行期の腫瘍では腫瘍の免疫逃避が進んでいることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に計画していた検討をほぼ完了し、腫瘍免疫微小環境の成立機序と腫瘍の進展に伴う免疫微小環境の変化に関する新たな知見を得ることができた。また、得られた成果について関連学会にて報告するとともに、当初2024年度に予定していた論文投稿を2023年度に前倒して行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
肝細胞癌の免疫微小環境における各種T細胞およびB細胞の空間的な分布について概ね明らかにできたことから、今後は、①マクロファージの形質、分布との関連、また、②その他の微小環境構成因子(特に線維性間質)との関係について検討を行う。また、これまでに肝細胞癌検体を用いて得られた成果について、他の癌腫における検討を行い、ヒト腫瘍における免疫微小環境の全体像と臨床病理学的意義を明らかにするための検討を引き続き推進する。
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