研究実績の概要 |
最終年度に、レトロマー構成因子であるVps35-1およびVps35-2の機能を明らかにするために、Beads貪食効率、Jurkat細胞の貪食、Trogocytosisの効率さらにはJurkat細胞の酸性化効率の測定を行なった。Jurkat細胞の取り込み、酸性化効率の測定に関しては、その方法の確立から行なった。その結果、Beadsを取り込む細胞の割合は、Vps35-1遺伝子発現抑制株(gs)またはVps35-2gsによって減少した。Jurkat細胞の貪食、Trogocytosisにおいては、対象物を取り込む細胞の割合はVps35-1gs, 35-2gs どちらも共に上昇したが、酸性化効率についてはどちらも共に減少した。これらの結果から、Vps35-1、35-2が取り込んだ対象物を酸性化、消化することで細胞内で”No more eat signal”が発生し、貪食を適量以上行わない様に制御するNegative regulationを行なっていることが予想される。Beads 貪食の際は酸性化、消化が一定以上進まず、”No more eat signal”が関与しないため、Vps35-1,2gsは対象物取り込みのみに関与する。そのため、Vps35-1gs, 35-2gsでは取り込み速度が減少し、Beadsを取り込んだ細胞の割合が減少するのではないかと考えられる。 全てのデータから、赤痢アメーバにおいて多様化したレトロマー構成因子は、異なる組み合わせで多様な種類の複合体を形成し、それぞれ別機能を持つことが明らかとなった。これは、赤痢アメーバにおいて、小胞輸送が重要であるがために多様化したRab分子と同様の傾向である。レトロマーの多様化により、より細かく小胞輸送を制御している可能性が示唆された。
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