研究課題/領域番号 |
21K15432
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中野 哲志 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (30794987)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 19A-ST320 / 全ゲノム解析 / 侵襲性肺炎球菌感染症 / カルバペネム耐性 / pbp1a |
研究実績の概要 |
乳幼児における侵襲性肺炎球菌感染症を予防するために各国において結合型肺炎球菌ワクチンが定期接種化されている。本邦でも2010年代初めに定期接種化され、乳幼児における侵襲性肺炎球菌感染症は減少した。一方でワクチンが効果を持たない莢膜型を持つ肺炎球菌の増加が問題となっている。同ワクチン導入後に各国において19A型莢膜を持つ肺炎球菌感染症が増加したが、本邦では19A-ST3111が増加した。これは諸外国で19A-ST320が増加したのとは特徴を異にしていた。一方で本邦において沖縄県においてのみ19A-ST320の増加を認めた。本研究ではこの沖縄県における19A-ST320増加に注目し、この原因を他国で検出された肺炎球菌ゲノムとの比較ゲノム解析によって明らかにした。本解析では本邦で検出された56株および海外で検出された931株の全ゲノム情報を解析した。本邦で検出された同クローン株は海外株と同様にペニシリン、セフォタキシム、メロペネム、マクロライドに耐性を示し、これはpbp1a-13保有を背景にしたpbp2bとの重複変異を原因としていた。本島で検出される株の半数程度は沖縄県の株と遺伝子学的背景を同一にしており、沖縄県からの流入が示唆されたが、残りは沖縄県株とは遺伝子学的背景が異なっていた。沖縄県で検出された株は2つのクローンに分類されたが、いずれも米国からの流入が示唆された。すなわち沖縄県には少なくとも2回以上の異なるタイミングで、米国から19A-ST320が流入したと考えられる。また、これらの流入は1990-2000年の間に起こっていた。同クローンは1997年に台湾から初めて報告されているが、本解析から同報告以前に米国では既にこのクローンが流行していたと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム解析が順調に進行したため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き本邦で検出される肺炎球菌について、その正確な伝播様式、薬剤耐性機構を明らかにするためにゲノム解析を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動に伴い一時的に研究の進行が遅れたため。
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