プロバイオティクス投与によりVAP(挿管に関連した肺炎)の予防効果が得られる可能性が示唆されている。ただし機序については腸内環境の改善を通して気管内の環境へ影響を与える「腸肺軸」が考えられている。また腸管内においては細菌叢やpHや有機酸濃度などの腸内環境により炎症抑制効果を得られるとされているが、気管内では細菌叢やpHや有機酸濃度などの環境がどのようになっているか未だ不明である。 本研究ではこれらを明らかにするために、気管内の環境の観察および、腸内環境に良いとされるプロバイオティクスが気管内の環境へ及ぼす影響について調べることが目的である。気管切開術後患者(以下、気切)は口腔内と気管が粘膜で連続しているのに対して、喉頭気管分離術後患者(以下、分離)は粘膜の連続性が断たれており、両群において気管内の環境は相違がある可能性がある。両群において気管内の環境の相違を観察する。また口腔内にプロバイオティクスを投与した際に気管内の環境へ与える影響が直接的なものか、それとも「腸肺軸」のように間接的なものかを明らかにする。 これまでに44名(気切=19名、分離=25名)の観察と、25名(気切=9名、分離=16名)のプロバイオティクス投与前後の観察を行った。現在は採取された気管内・口腔内・糞便・血液の各検体に含まれる細菌叢やpHや有機酸濃度の解析を行っておりところである。解析が終了次第、公表(論文・学会発表など)を行う予定としている。
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