本研究計画は、レジオネラ症の起因菌Legionella pneumophila SG1の強毒株が高率に保有する病原性遺伝子を探索し、その遺伝子から発現されるタンパク質の病態進行に関わる役割を明らかにすることを目的としている。 2023年度は、NGSを用いてL. pneumophila SG1の臨床分離株30株と環境由来株10株のショートリードを取得し、解析ツール「GenAPI」で全保有遺伝子を調べた。また、これらの株をハチノスツヅリガに接種し、24時間ごとの生存率データ(n=10)から、標準株に対して相対的に強毒な株、弱毒な株および中程度の株の3つに分類した。同様の手法で、研究期間全体を通して取得した、計72株(臨床分離株60、環境由来株10、標準株2)のゲノム解析データと、強毒株あるいは弱毒株の分類から、保有遺伝子名と毒性のスピアマン相関係数を算出した。その結果、強毒株が高率に保有する遺伝子として、脱ユビキチンリガーゼ、GNAT (GCN5-related N-acetyltransferases)ファミリーに属するアセチル基転移酵素あるいはエフェクター分子SidE関連タンパク質等が候補に挙がった。既報でレジオネラの病原性因子とされた遺伝子が複数含まれることから、スクリーニング法として有用であることが示唆された。これらの遺伝子以外に機能未知な遺伝子も候補に挙がっており、新規病原性遺伝子の機能解明につながる重要な成果となった。
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