研究課題
Epstein-Barrウイルス(EBV)は、B細胞を自然宿主とする普遍的なウイルスであるが、時にT細胞およびNK細胞にも感染し、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型、急速進行性NK細胞白血病や慢性活動性EBV感染症などの血液腫瘍の原因となる。これらのEBV関連T/NK細胞腫瘍は日本をはじめとした東アジアで報告が多く、予後不良で有効な治療法は未だ存在しない。本研究では、細胞を特徴付ける転写プロファイルと密接な関係をもつスーパーエンハンサーを解析し、EBV関連T/NK細胞腫瘍に特異的なスーパーエンハンサーを同定する。そして、EBV特異的なスーパーエンハンサー構造をコントロールすることで、予後不良なEBV関連T/NK細胞腫瘍の新たな治療法の開発を目指す。今年度は、EBV陽性T細胞株 2株、EBV陰性T細胞株 1株、EBV陽性NK細胞株 2株、およびEBV陰性NK細胞株 1株の抗H3K27ac抗体を使用したChIP-seqとHiChIPを実施し、NGSデータの解析を実施した。EBV陽性T/NK細胞に特徴的なスーパーエンハンサーを形成しているゲノム領域を同定するとともに、ウイルスゲノムが感染細胞内で高次構造をとることが明らかとなった。さらに、EBV陽性B細胞株であるLCLのHiChIPデータと比較することで、EBVの潜伏感染状態に応じて、ウイルスゲノム内でのゲノム間相互作用の構造が異なることを見出した。これらの結果は、Latency Type IIとType IIIでのウイルス発現は、ウイルスゲノムの高次構造によって違いが生じていることを示唆ものと考えている。
2: おおむね順調に進展している
Epstein-Barrウイルス感染細胞内において、ウイルスゲノムが高次構造を形成していることを明らかにでき、さらに潜伏感染状態とゲノム構造の相関を見出すことができた。研究計画が順調に進展している。
本研究によって、明らかとなったウイルスゲノム内でのゲノム-ゲノム相互作用を論文としてまとめ、国際誌に発表する準備を研究計画と並行して進めている。研究協力者と連携しながら、本研究課題を予定通り遂行していく。
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