研究課題/領域番号 |
21K15449
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
渡辺 崇広 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10624398)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EBV / DNAセンサー / 自然免疫応答 / リンパ増殖性疾患 |
研究実績の概要 |
Epstein-Barr virus (EBV) は成人の90%以上が感染し、生涯潜伏する、ありふれたヒトヘルペスウイルスである。時に感染細胞が腫瘍性に増殖し、様々なEBV関連がんを発症させる。EBV関連がんの新規発生者数は全世界で年20万人に及び、依然として死者数も多い。また、本邦を含む東アジアで発症率が多い慢性活動性EBV感染症は造血幹細胞移植が唯一寛解の可能性がある治療法であるが、移植関連死や医原性の日和見感染症が多いといった問題もある。したがって、造血幹細胞移植に代わる新たな治療法の開発が課題であるが、EBV関連がんの発症原因や発症機構は不明な点が多いため、根治を期待できる有効な抗ウイルス薬は未だ存在しない。 これまで私たちはEBVはDNAセンサーを介する自然免疫応答を回避する機構を備えていることを明らかにしてきた。本研究では当研究室独自のスクリーニングの系を用いて自然免疫応答を制御する候補因子を同定し、その制御機構の分子機構を明らかにすることで腫瘍発生との因果関係を明らかにすることを目指す。当該年度は、スクリーニングを遂行し、自然免疫応答を制御しうる候補因子の探索をすることができた。さらにその因子を培養細胞において過剰発現させた時の表現型解析およびノックアウトウイルスを用いた感染実験を遂行し、抑制因子として矛盾しないことを証明してきた。今後は、生化学、ウイルス学および免疫学的実験に加えて、EBV関連リンパ増殖性疾患モデルマウスにを用いた病原性解析を実施する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スプリットルシフェラーゼシステムを用いてcGAS, STING, DDX41 などのDNAセンサーとEBVタンパク質の相互作用タンパク質の網羅的探索を行った。またレポーター遺伝子アッセイのスクリーニングも実施し、1型インターフェロンの発現を制御する因子の探索を実施した。2つの探索実験により、STINGと相互作用し、自然免疫応答を負に制御する候補分子を同定した。その候補分子がSTINGと相互作用することを免疫沈降法などで示し、過剰発現により1型インターフェロンの発現が低下することがわかった。また候補となったウイルス因子をノックアウトした遺伝子変異ウイルスを作製し、その性状解析を実施した。よって当初の計画どおり、研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
合成二本鎖DNAやcGAMPを細胞内に導入した、STING経路活性化時における性状解析を進めたい。また遺伝子変異ウイルスを培養細胞およびEBV関連リンパ増殖性疾患発症モデルマウスに感染させ、腫瘍化との関連性を明らかにしていく計画である。
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