研究課題/領域番号 |
21K15452
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 理滋 北海道大学, 医学研究院, 助教 (60870532)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | SARS-CoV-2 / オートファジー / nsp6 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状は多岐に渡り、無症状感染者もいれば重篤な急性呼吸器症状を呈する感染者も存在する。しかしながら、なぜ症状に違いが生じるのか、その原因は不明のままである。最近、無症状患者と重症患者から単離された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム解析が行われ、重症患者ではnsp6タンパク質に変異(T11083G変異)があることが明らかになった。この結果からnsp6の変異がSARS-CoV-2の病原性発現と深く関与していることが示唆されるが、そのメカニズムは明らかにされていない。nsp6は細胞内で合成されるとオートファジーを誘導し、それを自身のゲノムRNA複製に利用する。このことから、nsp6の変異がオートファジーに何かしらの影響を与えた結果、病原性を発現した可能性が考えられる。そこで本申請研究では当研究室で新たに開発されたSARS-CoV-2のリバースジェネティクス法を駆使して、nsp6変異株を作出し、nsp6によるオートファジー誘導機構を解明することでSARS-Cov-2の病原性発現メカニズムの理解を目指す。本年度はまずSARS-CoV-2に感染した細胞でオートファジーが誘導されていることをオートファジーマーカーであるLC3を指標に調べた結果、感染細胞でオートファジーが誘導されていることを確認した。また、リバースジェネテクス法を用いてT11083G変異を有するSARS-CoV-2の作製に成功した。更に、この変異ウイルスと野生株の増殖性について培養細胞を用いて検討した所、変異ウイルスの増殖性が高い可能性を示した。今後は他の培養細胞を用いた増殖能の検討やハムスターを用いたin vivo系の実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では変異ウイルスを作製し、その変異ウイルスによるオートファジーへの影響を検討する所までを考えていたが、新型コロナウイルス流行の影響で研究活動に制限があったため、予定通りうまく行かなかった。しかしながら、それでも変異ウイルスの作製に成功し、増殖能の検討も行えた。オートファジーへの影響を調べるための準備はすでに整っているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、今後は変異ウイルスによるオートファジーへの影響について検討する。nsp6は宿主細胞内で合成されるとオートファゴソームを誘導させるが、誘導されたオートファゴソームはリソソームと融合しないことが報告されている。そこでGFP-RFP-LC3を細胞内に強制発現させ、変異ウイルスがオートファゴソームの形成及びリソソームとの融合に影響を与えているか検討する。また、nsp6によるオートファジー誘導メカニズムを解明するため、nsp6のC末端側にタグを挿入した変異ウイルスの作製も行う。作製後は細胞に感染させ、抗タグ抗体による免疫沈降法を行い、共沈降産物を質量分析することにより結合因子を網羅的に同定する。更に、T11083G変異を持つウイルスの病原性に変化が生じることを明らかにするため、動物実験を行う。ハムスターに従来株と変異株を感染させ、体重の増減及び肺のウイルス量を定量する予定である。
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