研究課題
初年度では、短鎖viral RNAの代表的な配列に基づき複数種の短鎖viral RNAをin vitro transcription により合成し、当該RNAの配列と長さの違いによるサイトカイン誘導性を解析した。また、合成した短鎖viralRNAの特徴(二次構造、脱リン酸化、キャップ構造の有無)によるサイトカイン誘導性を確認することで、非自己RNAセンサーによる短鎖viral RNAの認識機構を明らかにした。さらに、非自己RNAセンサーをsiRNA導入によりノックダウンし、短鎖viral RNAによる免疫誘導の消失を確認している。本年度では、短鎖viral RNA代表配列を対象としたstem-loop RT-PCRを構築し感染経過時間ごとに細胞中における短鎖viral RNA量を定量し、細胞内での非自己RNAセンサーの発現量との関連性を評価した。また、本研究で対象とする短鎖viral RNA はその長さから、宿主のmicro RNAのようにエクソソーム中に効率よく含有されると予想されるため、感染細胞培養上製中に含まれるエクソソームを単離し、small RNA-seqにより解析を行った。これらの解析により、細胞中の短鎖viral RNA量が感染後期において細胞内に多く蓄積され、相関して非自己RNAセンサーの発現も上昇することを確認した。またエクソソーム中においては、感染細胞中と同様の短鎖viral RNAを検出することができた。本研究では新型コロナウイルスが産生する短鎖viral RNAに着目し、当該RNAが感染時病態の重症化に与える影響について評価した。短鎖viral RNAはその特徴から、細胞内のサイトカイン産生を強く誘導しており、生体内で短鎖viral RNAが多量に産生される場合にはサイトカインストームを引き起こす一因子なり得ると推察される。
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iScience
巻: 26 ページ: 105742~105742
10.1016/j.isci.2022.105742
Communications Biology
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