研究課題/領域番号 |
21K15457
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小出 りえ 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (40846325)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 内在性RNAウイルス / 抗ウイルス免疫 / 哺乳類 / PIWI-interacting RNA / CRISPR-Cas |
研究実績の概要 |
1. PIWI-piRNA経路ノックアウトがBoDV感染に及ぼす影響 RNA切断活性に重要とされるPIWIドメインの一部を欠損したMili conditional KO(Mili cKO)マウスのコロニーを樹立し、これらのマウスの海馬から作製した神経前駆細胞(NPC)を用いてsmall RNA-seqを行った。その結果、Mili cKOマウスと野生型マウスのNPCにおいて、リード数やシーケンス長、シーケンスバイアスの差は殆ど認められず、NPCにおけるpiRNAの発現も精巣と比較すると非常に低かった。そこでBoDV感染に対するPIWI-piRNA経路の影響をより正確に評価できるin vitro実験系として、精子幹細胞を用いた新たな実験系を検討した。現在、野生型およびMili KOマウス由来の精子幹細胞を用いてBoDVの感染実験を進めている。
2. EBLN由来piRNAによる抗ウイルス機構の解析 先行研究からEBLN由来piRNAがNPCにおいてBoDVのmRNAをサイレンシングする可能性を着想したが、small RNA-seq解析の結果、NPCにおけるEBLN由来piRNAの発現は確認できなかった。一方、精巣由来の小分子RNAは、piRNAの特徴である1Uバイアスを示し、piRNAクラスターの内部もしくは近傍に存在するEBLN3, 4, 5全てにマップされた。また、BoDV N遺伝子の配列をpiRNAクラスターにノックインしたBoDV-N KIマウスの精巣において、小分子RNAがpiRNAクラスター内のBoDV-N配列にマップされることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はNPCをモデルにBoDVの感染実験を行う予定だったが、NPCからEBLN由来piRNAを検出できず、EBLN由来piRNAを高度に発現する精巣を用いた実験系に切り替えることとなった。当初の研究計画から一部変更せざるを得なかったが、現在精子幹細胞や精巣器官培養系を用いたBoDVの感染実験など、仮説の検証に必要な実験を着実に進めており、今後の研究進展が期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果を踏まえ、今後は以下の実験を遂行する。 1. PIWI-piRNA経路ノックアウトがBoDV感染に及ぼす影響 野生型およびMili KOマウス由来の精子幹細胞においてBoDVの感染性の比較を行い、Miliの欠損がBoDV感染に与える影響を調べる。また、in vivoにおけるBoDVの感染実験も並行して進め、異なる遺伝型のマウスにおいてBoDVの感染性や病原性を評価する。BoDVに感染した精子幹細胞および精巣からマウスPIWIを免疫沈降し、結合したpiRNAをsmall RNA-seqによって解析する。
2. EBLN由来piRNAによる抗ウイルス機構の解析 EBLN由来piRNAが精巣においてBoDV感染を抑制するかを調べるため、in vivoにおけるBoDVの精巣内接種とex vivo精巣器官培養系を用いたBoDVの感染実験を行う。BoDVに感染した精巣から抗BoDV piRNAの検出を行い、EBLN由来piRNAがBoDVに対する抵抗性因子として機能するかどうかを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度分の一部を本年度に繰り越したため、本年度の予算が多く、残予算が発生した。 また、当初の予定より細胞を用いた実験系が増えたため、使用計画に変更が生じた。
|