研究実績の概要 |
ヒトでHSVはヘルペス脳炎や皮膚炎を引き起こす。ヘルペス脳炎の患者に二重鎖RNA(dsRNA)であるTLR3のシグナル欠損が見つかっており、我々の結果からもTLR3-TypeI IFN産生シグナルがHSV感染防御に非常に大きな役割を果たしていると考えられる。そこで、ウイルス感染におけるTLR3応答制御の解明を行うために、本研究では、「HSV感染におけるTLR3リガンド探索」と「RNaseによるTLR3リガンドの制御機構の解明」の大きく分けて2つの点に着目して研究を進めている。 非感染、感染細胞からtotal RNAを抽出後、dsRNA精製キットを用いてdsRNAを精製したところ、感染後にdsRNAの量が増加していることが示された。 マクロファージで発現しているRNase4,6,T2の欠損した細胞株を作製し、TLR3の応答をみたところ、RNaseT2 欠損細胞では、TLR3応答が上昇していた。RNaseT2欠損細胞に 野生型を強制発現した細胞では、上昇していたTLR3応答が減弱した。RNase活性がTLR3応答に重要かどうか検証するために、RNase活性部位をアラニン置換した変異体を作製した。リガンドとRNaseT2野生型、活性部位変異体を混合したところ、野生型では、dsRNAが分解されたのに対し、変異体では分解が見られなかった。RNaseT2欠損細胞に活性部位変異体を強制発現した細胞では、上昇していたTLR3応答が変化なかったことから、RNase活性がTLR3応答に重要だということが示された。共焦点顕微鏡によりRNaseT2の局在を観察したところ、TLR3と同様、エンドリソソームに局在していることがわかった。これらのことから、RNaseT2はエンドリソソームに到達したdsRNAを分解することによりTLR3応答を制御することが示された。
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