研究課題/領域番号 |
21K15465
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
半谷 匠 東京大学, 先端科学技術研究センター, 客員研究員 (50785350)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ダメージ関連分子パターン / 造血幹細胞 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
HMGB1が惹起する炎症・線維化について予備的知見を得るために、種々の組織特異的HMGB1欠損マウスの解析を行ったところ、造血細胞特異的にHMGB1を欠損させたマウス(以下HMGB1 cKOマウス)において、野生型マウスと比較して骨髄中の細胞数の有意な減少を認めた。フローサイトメーターを用いて骨髄における各分化段階の血球系細胞を解析したところ、HMGB1 cKOマウスにおいて長期造血幹細胞(long-term hematopoietic stem cell; LT-HSC)の有意な減少を認めた。また分化の進んだmultipotent progenitor(MPP)、common myeloid progenitor(CMP), granulocyte monocyte progenitor(GMP)でも有意な減少を認めた。一方megakaryocyte erythroid progenitor(MEP)、common lymphoid progenitor(CLP)ではHMGB1 cKOマウスと野生型マウスにおいて有意な差は認められなかった。またLT-HSCをセルソーターにより単離しコロニーアッセイを行ったところ、HMGB1 cKOマウスでは顕著なコロニー形成低下を認めた。HMGB1欠損による造血系の異常をさらに検討するため、競合的再構築アッセイを行ったところ、末梢血においてはHMGB1 cKO骨髄由来細胞のキメリズムの顕著な低下が見られた。また骨髄においてもLT-HSC、MPP、CMP、GMP、MEP、CLPにおいて顕著なキメリズム低下が見られた。本検討によりHMGB1による造血系制御という興味深い意外な現象が見られた。HMGB1と炎症・線維化についての検討も行いつつ、次年度はHMGB1による造血幹細胞維持機構の解明およびHMGB1の造血器疾患における役割について検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではHMGB1の惹起する炎症・線維化について予備的な検討を行ったところ、HMGB1が造血幹細胞の維持に重要であるという、予期しない興味深い結果が得られた。HMGB1の全身性欠損マウスは生後24時間以内に死亡することから、HMGB1は個体発生において重要であることが分かっていたが、各々の組織幹細胞におけるHMGB1の役割は殆ど分かっていなかった。本研究ではHMGB1 cKOおよび野生型マウスの骨髄の解析および競合的再構築アッセイによりHMGB1の造血幹細胞維持における重要性を個体レベルで示した。また、in vitroにおけるコロニーアッセイの結果によりLT-HSCの造血能がcell intrinsicに低下していることを示した。したがって、当初予期しなかった結果により研究の方向性に変更が見られたものの、本研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は予期していなかった興味深い結果が得られたために、HMGB1による造血幹細胞の制御についてマウスモデルを用いて詳細な検討を行った。今後はHMGB1欠損により造血幹細胞が著減するメカニズムを中心に検討を行う予定である。具体的にはHMGB1 cKOマウス由来のLT-HSCにおいて細胞周期、細胞死の解析、またRNA-seq解析を行う。HMGB1はクロマチン結合タンパクであり、種々の遺伝子発現制御を行うという報告があり、RNA-seqにより何らかの遺伝子発現変化が見られる可能性が高い。その場合はLT-HSCにおいて発現変動遺伝子の強制発現あるいはCRISPR/Cas9によるノックアウトを行い、それらの遺伝子がHMGB1による造血幹細胞制御に寄与しているか否か、検討する。また、HMGB1は種々のがんにおいて高発現していることが知られており、造血器腫瘍においても重要は役割を果たしている可能性が高い。したがって、MLL-AF9やBCL-ABLといったヒト白血病において重要なキメラ遺伝子導入による白血病モデルにより、HMGB1の造血器腫瘍病態における役割についても検討する。また、血球系細胞から放出されるHMGB1が炎症・線維化に寄与する可能性もあるため、HMGB1 cKOマウスにおいてBLMモデルによる線維化の検討も行っていく。
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