研究課題/領域番号 |
21K15468
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平井 敏郎 大阪大学, 微生物病研究所, 特任講師(常勤) (00895815)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 組織局在型T細胞 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
組織局在型記憶T細胞(Trm)は、抹消組織に局在する記憶T細胞であり、その高い感染防御能からワクチン開発等で注目されている。申請者はこれまでに、独自の皮膚Trmモデルを用いて、Trmが組織内で維持される数に上限があることを示し、新規免疫誘導が、過去の免疫記憶を失わせてしまう可能性を明らかとした。本研究では、このT細胞間のニッチ競合の機序を、T細胞間の直接相互作用の観点から明らかとする事を目指す。研究初年度は、申請者が以前に実施した発現遺伝子の網羅的解析結果より、T細胞間の競合に強いT細胞において発現の上昇が観察されていた細胞膜上の細胞間相互作用にかかわる表面分子が、タンパク質レベルで発現上昇している事を評価し、一部の分子で実際に発現上昇を確認できた。興味深いことに、皮膚内のT細胞数が、特異的抗原の再刺激を受けることで増加し、一定期間後もこれまでに見出してきた皮膚内ニッチが維持できる上限数を超えたまま維持される可能性を見出した。このことはつまり、自身が特異的に認識する抗原への曝露が繰り返されることで、当該クローンの組織内での適合性が上昇していき、その結果なんらかのリゾース等が限られたニッチ内においても、初期の上限数を超えてTrmが存在できる可能性があるということである。Trmが増加する環境下で、前述の検討で確認した表面分子の発現が比例して上昇していく様子も観察できたため、これら分子がTrmのニッチ内での維持、さらにはTrm間の相互作用に関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した検討を全て実施できたわけではないが、予想外の発見があり、今後の新たな足掛かりを得たため。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、すでに発現遺伝子の網羅的解析により候補に上がっていた膜表面分子の全てを対象に、いくつかの状況下でこれを阻害し、その際のTrmの挙動の変化からTrm間の相互作用を明らかとする予定であった。一方で、昨年度の結果より、特に興味深い挙動を示す分子に当たりがついたため、本分子と、Trm数の変化が観察されている特異的抗原による再刺激のモデルに焦点を絞り、中和抗体によるTrm上の分子の阻害実験を中心として解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積りより一部安く購入できた消耗品があったため。次年度の消耗品に使用。
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