研究課題/領域番号 |
21K15481
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 茉美 新潟大学, 日本酒学センター, 特任助教 (40893235)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | xCT / 4F2hc (CD98) / がん / 転移 |
研究実績の概要 |
シスチン/グルタミン酸輸送系(xc-系)は、アミノ酸輸送を担うxCTとこのタンパク質の細胞膜上での発現を介助する4F2 heavy chain (CD98)とで構成される生体抗酸化系タンパク質である。xc-系に関しては、xCT単体の機能に着目した研究が広く行われているが、xCTとCD98の複合体として発現し、他の膜タンパク質との相互作用により細胞の機能を制御する可能性については殆ど検討されていない。特に、CD98は細胞外基質や細胞間との接着制御を通じてがん細胞の転移に関与するインテグリンと結合することが知られる。本研究では、xCT遺伝子を欠損(xCT-KO)および過剰発現(xCT-OE)させたがん細胞を用い、xCTの発現変動に伴うCD98とインテグリンの発現とその下流シグナルの変動を調べ、xc-系ががんの転移に果たす役割の解明を目指している。 本年度は、ヒトサルコーマ細胞HT1080の親株(WT)およびxCT-KO、xCT-OEのCD98とインテグリン(integrin beta-1)のタンパク質発現を解析したところ、WTと比較し、xCT-KOにおけるCD98の発現低下とxCT-OEにおける顕著な上昇を確認した。しかし、インテグリンの発現はこれに対応せず、WTに対しxCT-KOおよびxCT-OEで発現の上昇がみられた。in vitroでの遊走能・浸潤能試験では、WTに対しxCT-KOの遊走能と浸潤能が低下すること、このxCT-KOにxCT遺伝子を再導入して作製したxCT-OEのそれらは、WTと同程度まで回復しないことを確かめている。よって、xCTの欠損と過剰発現によるCD98の発現低下と上昇が、CD98と相互作用するタンパク質に影響を与えることで遊走と浸潤を抑制していることが考えられるが、xCT/CD98複合体とインテグリンの発現との関連に関しては、更なる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
xCT遺伝子の欠損ならびに過剰発現細胞におけるDC98とインテグリンの発現変動について、複数の種類のがん細胞で確かめた方がよいと判断して実験を進めているため、当初予定していた実験系の確立が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
①xCTの発現とCD98、インテグリンの発現変動について、今回の細胞株で得られた結果が他の細胞株や、野生型細胞においてxCTを誘導ないし阻害した時においても同様の傾向がみられるか確かめている。 ②当初の計画通り、xCTの発現量に比例したCD98およびインテグリンの発現とその制御下にある転移に関する機能を評価するため、ドキシサイクリン濃度依存的に標的遺伝子の発現調整が可能なTet-onシステムを発現する細胞を樹立し、xCTの発現量に応じたインテグリンの下流シグナル、遊走と浸潤能の解析を急ぐ。 ③当初の実験計画には盛り込まれていないが、xCT-KO、xCT-OEにおいて、なぜインテグリンの発現が上昇するのか、インテグリン遺伝子の転写制御等に着目して検討していく。また、xCT-KO、xCT-OEにおけるCD98の発現インバランスが、CD98とヘテロダイマーを形成する他のアミノ酸輸送体の活性にも影響を及ぼしているかもしれない。これについても、RI標識アミノ酸を用いた取り込み活性等で調べたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加した学会の開催がオンラインのみの開催となったため、旅費にあてる金額を使用しなかった。また、実験計画の遅れにより、本年度に予定していた実験に必要な物品を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度にて、購入予定の物品を購入する。また、当初の計画に盛り込まれていない実験の必要が生じているので、その実験に必要な物品を新たに購入する。
|