研究実績の概要 |
肺がん治療においてPD-1(Programmed cell death -1)やリガンドであるPD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されており、そのメカニズムや治療効果を予測するバイオマーカーが注目されている。免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍微小環境に多大な影響を与えることで知られているが、腫瘍内血管新生への作用については未だ不明な点が多い。本研究では様々なマウス細胞株を用いた皮下移植モデルにおいて抗PD-L1抗体治療による血管新生制御メカニズムを解析し、治療効果予測因子としての応用を目的としている。 令和3年度の目的として、マウス腫瘍細胞株の同種皮下移植モデルにおける、抗PD-L1抗体による治療効果の検討および腫瘍内血管新生への影響を掲げた。担癌マウスに抗PD-L1抗体を投与したところ、治療感受性を示すモデル (AB1-HA, MC38, MCA205, AC29)では内腔を伴わない未成熟な腫瘍内血管が増加し、特徴的な網目状の低酸素領域を呈した。一方で、治療抵抗性を示すモデル (3LL, KLN205)では腫瘍内血管への影響を認めなかった。さらに、抗PD-L1抗体による腫瘍内血管への影響を組織透明化手技による三次元画像評価においても確認した。また、この腫瘍内血管への影響に寄与する因子として、腫瘍細胞由来CXCL9/10/11に着目し、治療感受性モデルでは抗PD-L1抗体治療によりCXCL10/11の血中濃度が亢進していることを確認した。さらに、非小細胞肺がん症例において血清中のCXCL10/11濃度は抗PD-1抗体治療効果と正の相関性を認めた。本研究により、腫瘍組織におけるCXCL10/11の発現亢進が、抗PD-1/PD-L1抗体の抗腫瘍効果、および腫瘍血管新生抑制効果に寄与していることが示唆された。
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