PD-1(Programmed cell death -1)およびそのリガンドであるPD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害薬の有効性が様々な固形がんで示されており、その作用機序や治療効果を予測するバイオマーカーが探索されている。免疫チェックポイント阻害薬の腫瘍内血管新生への作用については不明な点が多く、本研究ではマウス腫瘍細胞株皮下移植モデルにおいて抗PD-L1抗体治療による血管新生制御メカニズムを解析し、治療効果予測因子としての応用を目的としている。 研究期間における成果として、担癌マウスに抗PD-L1抗体を投与したところ、治療感受性を示すモデルでは内腔を伴わない未成熟な腫瘍内血管が増加し、特徴的な低酸素領域を呈した。一方で、治療抵抗性の腫瘍では腫瘍内血管への影響を認めなかった。この腫瘍内血管への影響に寄与する因子として、腫瘍細胞由来CXCL9/10/11に着目し、治療感受性モデルでは抗PD-L1抗体治療によりCXCL10/11の血中濃度が亢進していることを確認した。令和4年度の成果としては、腫瘍細胞由来CXCL9/10/11について、それぞれが抗PD-L1抗体治療効果に及ぼす影響をshRNAによる遺伝子ノックダウンを用いて検討し、CXCL10/11をノックダウンした細胞株では抗PD-L1抗体の治療効果が認められなくなることを見出した。また、抗PD-L1抗体治療により腫瘍細胞由来CXCL9/10/11が発現上昇するメカニズムを、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現比較と、その結果を踏まえた転写因子解析で同定している。抗PD-1/PD-L1抗体の抗腫瘍効果に腫瘍細胞由来のCXCL10/11と、その発現上昇による腫瘍血管新生抑制効果が寄与していることが示唆された。
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