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2021 年度 実施状況報告書

IFNγによる腫瘍微小環境の代謝改変メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K15505
研究機関岡山大学

研究代表者

西田 充香子  岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (60844644)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードメトホルミン / 腫瘍微小環境 / 代謝 / IFNγ / 腫瘍浸潤CD8T細胞 / 腫瘍免疫
研究実績の概要

これまでに我々はメトホルミンによる免疫治療によって腫瘍浸潤CD8 TILs (CD8 TILs)の代謝は上昇し、腫瘍細胞の代謝は低下するという現象を見出した。さらに治療によりCD8 TILs のIFNγ産生が増加しており、代謝変化を誘導している因子は活性化されたCD8 TILsから分泌されるIFNγではないかと考え検討を行ってきた。事実、in vitro で腫瘍細胞にIFNγを処置した際の代謝能を評価したところ、解糖能ならびにミトコンドリア代謝が低下していた。そこで本研究ではまず、B16-fucci(WT腫瘍)並びにB16-fucciδIC (IFNγR1シグナル欠損腫瘍)を用いた腫瘍移植実験を行った。興味深いことにメトホルミンによる免疫治療の抗腫瘍効果はIFNγR1シグナル欠損腫瘍では消失し、さらにCD8 TILsのIFNγ産生能ならびに増殖も低下していた。また、IFNγ産生には解糖系が亢進することが重要であることからグルコースのトランスポーターであるGlut-1 発現も確認したところ、IFNγR1シグナル欠損腫瘍では治療をおこなってもCD8 TILsにおけるGlut-1の発現上昇は見られなかった。さらに腫瘍細胞自身においてはCD8TILsとは逆の反応を示し、IFNγR1シグナル欠損腫瘍のGlut-1 発現は上昇すなわち解糖能は常に高く、治療抵抗性になっていた。このことからメトホルミンによる免疫治療効果にIFNγならびに腫瘍細胞のIFNγR1シグナルが関わっていることがin vivo で証明された。また、in vitro においてIFNγ処置時の代謝関連分子のタンパク発現をウエスタンブロッティングで確認したところ、WT腫瘍とIFNγR1シグナル欠損腫瘍では解糖系ならびにミトコンドリア機能に関わる分子のタンパク発現に大きな違いがあることも明らかとなってきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

IFNγR1シグナル欠損腫瘍を用いた腫瘍移植実験ならびに腫瘍浸潤リンパ球(TIL) 解析はおおむね終了し、そこで得られた結果は一部、本年度にアクセプトされた論文にも発表することができた。さらにIFNγR1シグナル欠損腫瘍ではIFNγによって変動する代謝関連分子の発現パターンがWT腫瘍と異なっていることもウエスタンブロッティングの結果から明らかとなってきた。さらにその結果からIFNγによる腫瘍細胞の代謝制御に関与している可能性のある候補分子をいくつかリストアップすることが出来た。現在、それらの候補分子の関与を遺伝子学的解析によって証明しているところである。また、メトホルミンによる免疫治療時の腫瘍塊のシングルセル解析からも代謝制御に関与する分子の同定も同時に行っていたが想定よりやや時間がかかっており、次年度でしっかり進めていきたいと考えている。

今後の研究の推進方策

今年度の研究でIFNγによる腫瘍細胞の代謝制御に関与している可能性のある候補分子をリストアップすることが出来た。これらの分子の関与を証明するためにsiRNAを用いた検討が必須となったため、それらのsiRNA を準備し、現段階で、in vitro 実験系で関与分子のノックダウン腫瘍細胞(KD 腫瘍細胞)樹立する条件が確定したため、今後、それぞれのKD腫瘍細胞でIFNγによる腫瘍細胞の代謝変化がどのように変化するかシーホースアナライザーならびにウエスタンブロッティングを用いた解析を進める。候補分子が確定した際にはさらにshRNAを用いた安定株を樹立しその分子のin vivo における代謝制御の関与を調べる予定だが、in vivoのサンプルはシーホースアナライザーならびにウエスタンブロッティングでは代謝評価が難しいため、in vivo 実験に関してはフローサイトメトリーやメタボライト解析を用いて検討をする。さらに近年、代謝制御にはエピジェネティクス制御も重要であるとの報告もあることから、メトホルミンによる免疫治療時の腫瘍塊のATAC-seq 解析も行い、IFNγによる腫瘍微小環境の代謝改変に関わる分子のその詳細な代謝制御メカニズムについても今後、明らかにしていく予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Pharmacological effects on anaplerotic pathways alters the metabolic landscape in the tumor microenvironment, causing unpredictable, sustained antitumor immunity.2022

    • 著者名/発表者名
      Udono H , Nishida M
    • 雑誌名

      International immunology

      巻: 34 ページ: 133-140

    • DOI

      10.1093/intimm/dxab067.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mitochondrial reactive oxygen species trigger metformin-dependent antitumor immunity via activation of Nrf2/mTORC1/p62 axis in tumor-infiltrating CD8T lymphocytes.2021

    • 著者名/発表者名
      Nishida M, Yamashita N, Ogawa T, Koseki K, Warabi E, Ohe T, Komatsu M, Matsushita H, Kakimi K, Kawakami E, Shiroguchi K, Udono H.
    • 雑誌名

      Journal for immunotherapy of cancer

      巻: 9 ページ: e002954

    • DOI

      10.1136/jitc-2021-002954.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] メトホルミン治療研究から読み解く腫瘍微小環境の代謝改変メカニズム2021

    • 著者名/発表者名
      西田充香子
    • 学会等名
      第25 回 日本がん免疫学会総会
  • [学会発表] メトホルミンは ROS 依存的にNrf2/mTORC1 経路を活性化し CD8TILs を賦活する2021

    • 著者名/発表者名
      西田充香子, 鵜殿平一郎
    • 学会等名
      第80 回 日本癌学会学術総会
  • [学会発表] メトホルミンによる活性酸素依存的Nrf2/mTORC1/p62 経路を介した抗腫瘍効果メカニズム2021

    • 著者名/発表者名
      西田充香子, 山下奈穂子, 鵜殿平一郎
    • 学会等名
      第15回 日本臨床ストレス応答学会大会
  • [図書] 腫瘍内科 特集 がん免疫療法研究の進歩2022

    • 著者名/発表者名
      鵜殿平一郎、西田充香子
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      科学評論社
  • [図書] 週刊 医学のあゆみ 腫瘍免疫 免疫ネットワークから考える基礎と臨床2022

    • 著者名/発表者名
      西田充香子、鵜殿平一郎
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      医歯薬出版株式会社
  • [備考] 岡山大学 プレスリリース

    • URL

      https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id877.html?msclkid=91e13b59c52e11eca3f224dd62014330

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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