研究課題/領域番号 |
21K15508
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堀口 晴紀 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特任助教 (70755454)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん微小環境 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果から、ANGPTL2は発現細胞及び標的細胞に依存してがん促進とがん抑制の二面性を有していることを明らかにしてきたが、本研究課題では、がん微小環境におけるANGPTL2のがん促進/抑制制御機構の理解に挑み、その成果ががん微小環境におけるがん細胞と間質細胞の相互作用の分子基盤解明につながり、様々ながんに対する個別化がん治療戦略確立への応用が期待される。 (1)がん促進効果とがん抑制効果を決定するANGPTL2の分子メカニズムの解明:がん促進に作用するがん細胞由来のANGPTL2とがん抑制に作用する間質細胞由来のANGPTL2の比較により、がん細胞由来のANGPTL2タンパクに見られる翻訳後修飾を同定した。この翻訳後修飾がANGPTL2受容体への親和性に影響するか検証する。 (2)ANGPTL2によるがん促進/抑制を動機づけるがん微小環境の解明:ANGPTL2ががん促進に作用する発がんモデルと、ANGPTL2ががん抑制に作用する発がんモデルのがん微小環境の細胞の解析により、ある免疫細胞が後者のモデルのがん組織において増加していることを見出した。また、前者のモデルマウスの解析に際し、ANGPTL2による新規がん促進メカニズムを見出しており、詳細な分子メカニズムを解明する。 (3)がん微小環境の特徴に応じたがん治療実験の検証:マウス大腸がん細胞株を用いたシンジェニックモデルにより、免疫チェックポイント阻害剤によりがんの増殖を抑制する実験系を確立し、Angptl2欠損マウスを用いて、免疫チェックポイント阻害剤の効果とANGPTL2の関連を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)がん促進効果とがん抑制効果を決定するANGPTL2の分子メカニズムの解明:がん細胞由来のANGPTL2タンパクに見られる翻訳後修飾を同定したが、この翻訳後修飾が普遍性のあるものかを検証する必要がある。 (2)ANGPTL2によるがん促進/抑制を動機づけるがん微小環境の解明:ANGPTL2による新規がん促進メカニズムを予期せず見出したが、本研究課題である、がん微小環境におけるANGPTL2のがん促進/抑制制御機構の理解には必要なため、詳細な分子メカニズムの解明に向けて解析を継続する。 (3)がん微小環境の特徴に応じたがん治療実験の検証:Angptl2欠損マウスの準備にやや遅れが生じているが、期間内の本研究課題の進行には影響は少ないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に示したとおり、本研究課題はおおむね順調に進展している。(2)ANGPTL2によるがん促進/抑制を動機づけるがん微小環境の解明、(3)がん微小環境の特徴に応じたがん治療実験の検証において、モデルマウスの作成など準備に時間を必要とする解析は早期に着手しする。特にANgptl2欠損マウスは限られた飼育数での解析を強いられことが予想されるので、免疫チェックポイント阻害剤の効果の検証を最優先に行う。(2)のANGPTL2による新規がん促進メカニズムの解明においては、細胞株を用いた解析にシフトチェンジすることが効果的だと考えている。(1)でがん細胞由来のANGPTL2タンパクに見られる翻訳後修飾を同定したが、ANGPTL2受容体への親和性に影響するか検証するに意義を再認識するために、他のマウス及びヒト細胞を用いて、この翻訳後修飾が普遍性のあるものかを検証する
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