エピジェネティクス研究の進歩により遺伝子の発現制御はDNA塩基配列の変化だけでなく、DNA塩基配列は伴わない後天的かつ可逆的な修飾によってもたらされことがわかってきた。なかでもDNAのメチル化修飾は遺伝子発現を抑制することが知られており、近年では、DNAメチル化による遺伝子の不活化も発がん因子と考えられるようになった。本研究では、特定の遺伝子のみの発現制御を行うことができる現行法のメチル化編集技術にプロテインノックダウン法であるAIDシステムを組み合わせることで、特定の遺伝子が及ぼす細胞への影響をメチル化修飾編集前後の2段階で形質変化を比較・解析し、複雑な癌悪性化獲得のプロセスを詳細に調査することを研究目的とした。 ヒト大腸がん細胞HCT116を用い、AIDシステムを用いたプロテインノックダウン法を導入するために必要な2種類のプラスミドを作製した。ゲノム編集により作成した2種類のプラスミドをHCT116細胞にノックインした。編集されたHCT116細胞に目的の遺伝子が導入されているかを確認するために、ウェスタンブロティングを行い、目的タンパクの発現を確認した。Auxin添加によるプロテインノックダウンが正常に行われるかも確認済である。使用する培養細胞株に対して、長期的なAuxin存在下において細胞培養を行い、編集細胞に影響がないかの確認を行っている。また、先行研究や臨床情報をもとに癌関連遺伝子のメチル化されている遺伝子領域を選択し、標的領域へ対応するgRNAの設計、編集されたHCT116を用いて脱メチル化により標的遺伝子への変化を定量PCRによるmRNA測定、ウェスタンブロティングによるタンパク発現により確認を行っている。
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