研究実績の概要 |
胃癌は一般的に予後不良なびまん型胃癌と、比較的予後が良い腸型胃癌に分類される。内視鏡技術の発展に伴い早期発見・早期治療が可能となり、腸型胃癌に関しては予後改善に劇的な成果が出ている。しかし、びまん型胃癌は内視鏡検査による早期発見・早期治療が困難であり、依然として予後不良癌の代表格である。内視鏡スクリーニングという、腸型胃癌と同様の早期発見アプローチが有効でないびまん型胃癌に対し、申請者はゲノム解析からリスク因子を明らかにできないかと考えた。そこで、申請者は日本人胃癌の大規模ゲノム解析を行い、びまん型胃癌の発癌と関連する生殖細胞系列の遺伝子変異を複数明らかにした(Suzuki et al., Science Advances, 2020)。本研究では、この解析により明らかにしたびまん型胃癌の発癌と関連する遺伝子の内、CDH1に着目する。申請者は、びまん型胃癌の発がんと関連する5種類の生殖細胞系列のCD1H変異(病的胚細胞バリアント)を明らかにしたが、それらの機能的な解析は行えていない。また、CD1H病的胚細胞バリアントを保有するびまん型胃癌患者に濃厚な家族歴が認められなかったことから、環境因子の関与も考えられた。そこで本研究では、びまん型胃癌の発癌と関連するCDH1の病的胚細胞バリアントの機能解析と、環境リスク因子の探索を行う。本研究により、びまん型胃癌リスク因子の層別化を行い、将来的な予防医学への応用を目指す。
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