研究実績の概要 |
54種類のライソソーム関連遺伝子をsiRNA法でノックダウンできるライブラリーをデザインした。ヒト肝細胞癌細胞株 (HuH-7, Hep-3B) を用いて、このライブラリーを用いてライソソーム関連遺伝子をノックダウンし、細胞増殖、浸潤、遊走能を評価した。いずれの細胞株でも細胞増殖抑制を有意に誘導したライソソーム膜タンパク質であるPARK9に着目した。siRNA法を用いたPARK9ノックダウン条件下で、PARK9タンパク質発現量、細胞増殖能を評価した。さらに、鉄、脂質過酸化、活性酸素種 (ROS) の蓄積、ミトコンドリア機能を評価した。ヒト肝細胞癌細胞株においてPARK9ノックダウンによりPARK9タンパク質の発現量は低下し、細胞増殖能、浸潤能、遊走能の抑制効果を認めた。PARK9ノックダウンにより電子顕微鏡、蛍光顕微鏡でミトコンドリアの蓄積を確認した。また、ミトコンドリア膜電位の低下とミトコンドリア選択的オートファジーであるマイトファジー活性の低下を確認した。ミトコンドリア内における鉄、脂質過酸化、ROSの蓄積をフローサイトメトリーと蛍光顕微鏡で確認した。ヒト肝細胞癌細胞株において、PARK9活性抑制によりミトコンドリア機能不全が誘導され、鉄代謝異常が生じることにより、フェロトーシスが誘導されることが示唆された。今後はさらにPARK9と薬剤耐性の関与に関して、肝細胞癌に対する分子標的治療薬であるレンバチニブの投与下で、薬剤のPARK9タンパク質発現量を評価する。最終的に、PARK9をノックダウンしたレンバチニブ耐性肝細胞癌細胞株において、レンバチニブの耐性を克服することを確認する。
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