研究課題/領域番号 |
21K15527
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
成田 翔子 (野田翔子) 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (20819312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / ペリサイト / FAK |
研究実績の概要 |
脳血管ではアストロサイト、ペリサイト、血管内皮細胞からなる血液脳関門が存在し、血管から脳実質への物質透過、免疫細胞の遊走、腫瘍細胞の浸潤を制御している。本研究では、がん細胞が脳へ転移浸潤する際に、血液脳関門がどのようにこれを制御し、脳転移を抑制または亢進しているかを明らかにすべく、血液脳関門を培養細胞で再構成したin vitroモデルと血管内皮特異的なfocal adhesion kinase(FAK)のノックアウトマウスで転移浸潤の評価を行なっている。 血液脳関門の培養細胞による再構成系では、アストロサイトと血管内皮細胞による系が腫瘍分野の主流となっていたが、本研究ではペリサイトも加えた3種の培養細胞による再構成系でのがん細胞の浸潤の解析を実現し、評価系を確立した。これにより、アストロサイトだけでなくペリサイト側の因子ががん細胞の転移浸潤に与える影響を評価することが可能となった。 また、血管内皮特異的なFAKのノックアウトマウスでは、これまで体幹部の転移が減少することが報告されていた。本研究で同マウスの脳転移を解析したところ、むしろ増加増大する傾向が見られた。この結果をさらに詳細に解析すべく、申請者は脳転移しやすいがん細胞株の作成、マウスの全脳透明化により3Dで脳転移の数、サイズを解析する手法の確立を行った。これらを組み合わせることで、in vivoでの脳転移の解析が容易になった。 今後はこれらの系を組み合わせることで、血液脳関門ががん細胞の転移浸潤をどのように制御しているのか明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitro系、in vivoの系ともにより優れた実験系の確立が必要と考え、それぞれ系の改善を行った。これにより今後の解析は容易になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
血液脳関門を培養細胞で再構成したin vitroモデルを用いて、アストロサイト、ペリサイト側の遺伝子改変を行い、これらががん細胞の転移浸潤に与える影響を解析する。また、新たに確立した透明化による脳転移の解析手法を用いて、血管内皮特異的なFAKのノックアウトマウスにおける脳転移の数やサイズを再評価する。体幹部と異なる結果が得られる場合には、その背景にある血管内皮細胞の違いを明らかにすべく、脳および体幹部の血管内皮細胞の細胞接着因子の発現の違いを解析する。また、同マウスの脳の血管内皮細胞を単離し、単離した細胞を用いたin vitroの再構成系の構築を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系の改善を行ったことにより、予定していた使用額との差が生まれた。確立した系による解析を行う際に使用する。
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