研究課題
本研究申請ではCRISPR/Cas9を用いて融合遺伝子BCR::ABL1を生成することにより、実際の病態を精確に再現する。昨年度の報告では、サイトカイン依存性増殖を示す白血病細胞株TF-1において、CRISPR/Cas9を用いて9番染色体のABL1遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子に対してDNA二重鎖切断を同時に引き起こすことで、分子量の異なるBCR::ABL1のうち、慢性骨髄性白血病に特徴的な分子量210のBCR::ABL1を生成し、それが正しく機能していることを証明した。その後の研究の発展として、同様の方法を用いて、急性リンパ性白血病に特徴的な分子量190のBCR::ABL1を生成することにも成功した。両BCR::ABL1は、BCR::ABL1の活性を抑制する第一世代チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブのみならず、第二・第三世代チロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブやポナチニブといった薬剤に対して感受性を示した。また両BCR::ABL1を有するTF-1細胞のトランスクリプトームを解析することで発現の異なる遺伝子を同定した。以上の成果を「第84回日本血液学会学術集会」、「第64回日本小児血液・がん学会学術集会」、「第5回日本遺伝子細胞治療学会若手研究会セミナー」で口頭講演し、また原著論文としてCancer Gene Therapyへ投稿し受理された。さらに、同論文発表の業績に対して、令和4年度山梨大学医学会若手研究者表彰奨学金を受賞することができた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の研究結果を発展させ、急性リンパ性白血病に特徴的な分子量190のBCR::ABL1を生成することにも成功した。また同研究成果を2つの国内学会と1つの専門セミナーで発表し、1つの国際論文に投稿し受理された。
より汎用的なモデルとして、臍帯血や末梢血造血幹細胞などの多能性幹細胞にCRISPR/Cas9を使用してBCR::ABL1を生成する。BCRとABL1のゲノム安定性に関する知見を深めることで、自然発生的にBCR::ABL1が生成される条件について検討する。
実験計画上、翌年に使用する予定となったものの試薬などの消耗品費用のため。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Cancer Gene Therapy
巻: 30 ページ: 38~50
10.1038/s41417-022-00522-w