免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法は腫瘍微小環境において、特に免疫 原性の高い腫瘍に効果的であることが報告されている。従来、乳癌は免疫原性の少ない癌種 とされてきたが、近年の前臨床試験及び臨床試験において抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体をはじ めとするがん免疫療法の乳癌への有効性が報告されている。さらに奏功例においては従来の 殺細胞性抗癌剤では得る事の出来ない長期生存が認められることが特徴として挙げられる。 しかしながら、肝転移巣におけるがん免疫療法の効果は限定的であることが問題点として挙 げられる。転移乳癌患者において予後に強く関連する肝転移の制御は不可欠であると考え、 我々研究グループはマウスを用いた乳癌肝転移モデル並びにヒト臨床サンプルを利用し、乳 癌肝転移巣の腫瘍免疫微小環境をターゲットとした新規治療戦略の開発を目指している。 研究初年度である2021年度に、我々は乳がん原発モデルにおいて、既に肝臓の免疫代謝経路が腫瘍により変化していることを見いだした。方法としてトランスクリプトーム解析、免疫細胞染色を用いて、特異的な腫瘍特異的なシグナル経路を確認する事が出来た。特に好中球浸潤などに変化を認め、これは本研究の目的である免疫チェックポイント阻害薬の効果に深く関わるところである。次年度はさらに各発現変動遺伝子の解析を行う予定であり、更に浸潤免疫細胞についても、トランスクリプトーム解析、メタボローム解析、イメージングマスサイトメトリーなどを用いて、解像度の高い担癌状態における肝臓の変化を確認していく予定である。
|