研究課題
甲状腺癌症例の多くは緩徐で予後良好な経過を示す一方、転移・再発により追加治療を要する症例も存在し、リスクの層別化が切除範囲を含めた治療最適化の上で課題となっている。様々な癌種で癌細胞の腫瘍内不均一性と腫瘍組織内に存在する免疫細胞の組成や性質が、癌の進展や治療抵抗性と関わることが知られてきた。我々はこれまでに、1切片から12種類のエピトープを免疫組織化学で解析できるmultiplex immunohistochemistry (IHC)ならびにその画像定量化技術image cytometryを初めて開発し、1枚の切片から定量化可能な10種類の免疫細胞の組成や性質・分布を統計解析することで、癌の亜分類や予後と相関する腫瘍の免疫的性質を報告してきた。この手法を用いて、我々はこれまでに、甲状腺乳頭癌において腫瘍組織内部の免疫特性が周囲非癌部と異なることや、病理学的侵襲性と骨髄系免疫細胞の細胞密度に相関がみられることから、甲状腺癌の発生・進行に免疫的機序が関与する可能性を報告してきた。本研究では、甲状腺濾胞癌被膜浸潤部に着目して、組織内免疫細胞分布のマッピングを通じて、癌の進行に関わる免疫的機序を解析し、甲状腺濾胞癌の早期診断や発癌機序の解明に寄与する組織バイオマーカーの確立することを目的とする。R3年度は研究計画にもとづき、Discovery cohortにおける甲状腺濾胞癌の免疫的癌微小環境特性の解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
R3年度に予定していた解析が計画通りに進行し、次年度への準備状況も良好である。
R3年度の解析で得られた結果と利用可能な血管浸潤性、リンパ節転移、後発遠隔転移の有無などの臨床病理学的因子・予後との相関解析との相関を検討する。さらに、Validation cohortにおける甲状腺濾胞癌の免疫的癌微小環境特性の解析を行い、すでに準備した未染色検体60例について、Discovery cohortで得られた癌の内部や浸潤部形成に関与する免疫細胞種について検証を行う。また、細胞頻度のみでなく、同様に局在と臨床病理学的因子・予後との相関の検討も行う。
上記の通り当初の研究計画通りに進行したが、10519円が端数として生じたため次年度の試薬購入費に当てる予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Frontiers in Oncology
巻: 11 ページ: 3002
10.3389/fonc.2021.713561
International Journal of Cancer
巻: 149(12) ページ: 2116-2124
10.1002/ijc.33786.
Frontiers in Immunology
巻: 12:769534 ページ: 769534
10.3389/fimmu.2021.769534.