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2021 年度 実施状況報告書

ミトコンドリアDNAをターゲットとした免疫原性を高める新たな治療戦略

研究課題

研究課題/領域番号 21K15541
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

田中 広祐  国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (50894119)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードミトコンドリアDNA / EGFR阻害薬 / EGFR遺伝子変異 / cGAS-STING / がん免疫療法 / 自然免疫応答 / Cold to Hot Tumor
研究実績の概要

免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は従来のがん治療ではまれな長期奏功例が10~20%で認められ、新たながん治療の柱となりつつある。一方で免疫原性の低いがんでは効果が乏しく、既存の治療の組み合わせでいかに免疫原性を高めるかが重要な課題となる。本研究では分子標的治療薬の細胞死のメカニズムに着目し、免疫抑制性の細胞死(アポトーシス)を抑えることで免疫原性を高める治療戦略を考えた。
EGFR遺伝子変異肺がん細胞においてEGFR阻害薬はカスパーゼに依存したアポトーシスを誘導する。同時にEGFR阻害薬は「ミトコンドリアDNAの細胞質への漏出」を促す。カスパーゼはcGAS-STING経路を抑制することで免疫原性の細胞死が抑えられることが報告されている。そこでEGFR阻害薬と同時にカスパーゼを阻害するとDNAセンサーであるcGAS-STING経路が顕著に活性化することを我々は見出した。
cGAS-STING経路をターゲットとした免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を増強する研究開発は大きな注目を浴びている。PARP阻害薬やSTINGアゴニストなどが臨床試験に進んでいるが、Cold Tumorをターゲットとした治療は未だ確立していない。ICI不応性のEGFR遺伝子変異肺がんの新たながん免疫治療として「EGFR阻害薬+カスパーゼ阻害薬」の併用療法を本研究で提唱する。同治療がICIの効果を増強するかをシンジェニックマウスモデルを用いて確認する。加えて他の「遺伝子変異がん+分子標的薬」の組み合わせにおいても同戦略が応用できるかを検証する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

RNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析で「オシメルチニブ(EGFR阻害薬)+カスパーゼ阻害薬」を投与したH1975細胞で1型インターフェロン応答が顕著に活性化することが示された。GSEA解析で自然免疫応答のHallmarkが上位を占めた。またミトコンドリアDNAを欠失させたRho0細胞で、これらの免疫応答が解除された。
一方でKRAS変異がんで「MEK阻害薬+カスパーゼ阻害薬」でのcGAS-STING経路の活性化は軽微であった。
EGFR遺伝子変異がんのシンジェニックマウスモデル(TgmDマウスモデル)を確立し、オシメルチニブが有効であることを確認した。今後、ICI併用での薬効・薬理試験に進む。

今後の研究の推進方策

KRAS変異がんは本研究の戦略とは相容れないため、EGFR遺伝子変異肺がんでの研究にひとまずは注力する。
CRISPR-Cas9でSTINGノックアウト細胞を作成し、自然免疫応答が解除されるかを確認する。
EGFR遺伝子変異がんのシンジェニックマウスモデル(TgmDマウスモデル)を用いて「EGFR阻害薬+カスパーゼ阻害薬」の併用療法がICIの治療効果を増強するかを検証する。腫瘍に浸潤した免疫細胞をフローサイトメトリーを用いて評価する。

次年度使用額が生じた理由

シンジェニックマウスモデルの確立に時間がかかった。次年度、薬効・薬理試験に向けた試薬、TIL解析などに使用する。

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公開日: 2022-12-28  

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