研究課題/領域番号 |
21K15542
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
板橋 耕太 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (10828990)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬の有効性が肺がんを含めて様々ながん種において証明され、がんに対する免疫療法は一段と注目を集めている。その反面、無効症例も相当割合で存在し、効果予測バイオマーカーや、より有効性の高い治療開発が期待されている。ヒトの腫瘍局所には制御性T細胞が豊富に浸潤し、腫瘍に対する免疫応答を抑制していることが知られている。我々の研究室では、腫瘍中のPD-1陽性制御性T細胞が、PD1阻害薬投与によって活性化することで、有効な抗腫瘍免疫を阻害し、PD-1阻害薬の耐性機序や急性増悪の原因になることを明らかにしてきた。このように、腫瘍浸潤制御性T細胞、特にPD-1陽性の制御性T細胞の重要性が明らかになってきている一方で、腫瘍局所で制御性T細胞が活性化表現型に分化する機序やPD-1蛋白の発現が誘導される機構に関しては不明な点が多い。 申請者は特にエピゲノムの観点からこれらの疑問点を明らかにするため、まず腫瘍制御性T細胞のオープンクロマチン解析とトランスクリプトーム解析を行った。クロマチン免疫沈降シーケンスの解析と統合して解析を進めることにより、腫瘍の制御性T細胞の分化を誘導する転写因子の候補を複数同定した。候補遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスの作成を開始し、順調に繁殖をすすめている。今後コンディショナルノックアウトマウスを用いた、腫瘍の皮下移植モデルあるいは肺転移モデルにて、制御性T細胞の表現型の変化や腫瘍増殖への影響などを評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
制御性T細胞にてPD-1発現を誘導する候補遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスは作成済みであり、順調に繁殖が進んでいる。作成したコンディショナルノックアウトを使用して、マウスの腫瘍細胞株の皮下移植モデルと肺転移モデルを用いて、候補遺伝子の制御性T細胞における機能の評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
フローサイトメトリーとオープンクロマチン解析、トランスクリプトーム解析にて見出された候補遺伝子の腫瘍浸潤制御性T細胞における機能解析を進めている。また、ヒトのPD-1阻害薬が投与された症例を集積し、候補遺伝子の制御性T細胞におけるPD-1発現との関連や、PD-1阻害薬の効果との関連の検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの繁殖数に限りがあり、一部のマウスの実験を次年度に実施する予定となったため。
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