手術可能なStageⅡ、Ⅲ食道癌の半数近くが転移・再発をきたす。近年のゲノム解析技術の発展にもかかわらず、転移再発食道癌に対する有効な化学療法は限られており、革新的なアプローチによる新規治療法の開発が急務である。そこで、本研究では、術前化学療法を受けた食道癌患者から内視鏡検査あるいは外科手術によって採取された腫瘍検体を用いて、患者腫瘍組織移植(patient-derived xenograft; PDX)モデルを作成し、細胞表面タンパク質(サーフェスオーム)解析から下流の活性化シグナル経路同定のためのリン酸化タンパク質解析まで含む高深度な多層プロテオーム解析によって、新規治療標的分子や薬剤感受性予測バイオマーカーの探索同定を行った。現在までに、食道癌患者33症例からPDXモデルを作成した。このうち4症例においては、治療前と術前化学療法後のペアPDXモデルが作成できた。さらに9症例において、患者腫瘍由来細胞株(PDC)を樹立した。このうち、ペアとして作成できた食道癌PDXモデルと、DCF療法に異なる感受性を示した食道癌症例由来のPDXモデルを中心に、ゲノム、トランスクリプトーム、サーフェスオームを含む空間プロテオーム解析を行った。得られた分子プロファイルの比較から、DCF療法への感受性に関連する分子シグネチャの同定を進めるとともに、有望な治療標的分子についてはすでに機能解析を行っている。
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