研究実績の概要 |
迅速診断時に施行した術中迅速免疫組織化学染色と、永久標本のFFPE切片上で施行した通常の免疫組織化学染色の標本から、Whole slide image(WSI)を作成し、深層学習を行わせ、免疫染色結果を予測させるAIモデルを作製し、その有用性・妥当性を検討する。今年度は、膠腫と診断した症例50例の、迅速診断および永久標本でのHE染色(参考データ)およびATRX, IDH1, p53, Olig2, GFAP, Ki-67の免疫組織化学染色のWSIを作成し、各イメージから、倍率200倍でJPEG画像を1症例から数枚ずつ切り出した。Convolutional Neural Network による病変組織の分類モデルを構築し、まず始めに、p53, ATRX, Olig2の染色結果を判定する組織診断モデルの学習を行った。p53に関して、陽性例から21枚の画像データを作成し、19枚を学習用に、2枚をテスト用として振り分けた。陰性例からも画像データを6枚作成し、半分ずつを学習・テスト用に使用した。Olig2は陽性例から50枚の画像データを作成し、45枚を学習用に、5枚をテスト用とした。ATRXは、陽性例から53枚の画像データを作成し、51枚を学習用に、2枚をテスト用とした。陰性例からも2枚画像を作成し、検討に用いた。結果、p53の判定モデルに関して、陰性例に対する診断精度は、感度は66%, 特異度は100%で、陽性例に対する精度は、感度100%, 特異度66%であった。ATRXとOlig2に関しては、陰性症例の画像データが不足していたため、比較可能なモデルの作成に今年度は至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Olig2, p53, ATRXの免疫組織化学染色は、R-IHCにおいても陽性の場合は比較的染色性が強く鮮明であり、通常法のIHCと比較しても遜色なく、JPEG画像を作成するにあたっても順調に作業が進んだ。Olig2, ATRXの学習モデルの作成に関しては、もとより陰性を示す膠腫症例が少ないこともあり、陰性画像データ不足が主な原因で結果が出なかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、より症例を増やして、陽性、陰性ともに多くのJPEG画像を用いた学習を行わせ、p53以外の抗体の判定モデルも作成、検証したいと考えている。Olig2, ATRXなど、もとより陰性を示す膠腫症例が少ない抗体に関しては、拡張の技法を使用するなどして問題を克服したい。尚、Olig2, ATRXはp53と同様に核内抗原をダーゲットとしているため、十分な教師画像を供与してモデルをすれば少なくともp53と同等の成果が得られると考えている。また、IDH1やKi-67等の判定モデルの作成とともに並行して取り組みたい。目視での判定に日常困難を感じているIDH1に関しては、恐らくAI診断モデルの作製にも困難が予想されるが、幅広い症例から学習させることで、より正確な判定モデルの作成を目指したいと考えている。また、Ki-67に関しては、陽性か陰性かの判定に加えて、陽性率まで回答できるモデルの作成に取り組みたい。迅速免疫研究会を含めた種々の学会で研究成果を発表し、最終的には論文化したいと考えている。
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