進行性肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬(Immune-checkpoint inhibitor: ICI)が標準治療の一つとなった。ICIは従来の化学療法と異なり、リンパ球の活性化や集簇により腫瘍を一時増大させることがあり、従来通りのCT画像では早期に治療効果判定をすることが困難なことがたびたびある。体液を用いたリキッドバイオプシーは低侵襲で行うことが可能であり、特に血液中のcirculating tumor DNAの定量的なモニタリングを治療の効果判定に用いることが期待されている。 本研究では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与した非小細胞肺がん(NSCLC)症例において、治療前および治療開始中に行った血液でのリキッドバイオプシーによって得られた変異を持った遺伝子の割合(変異アリル頻度、Variant Allele Frequency;VAF)の変化量と、治療開始前および各観察点での画像評価の関連について解析した。その結果、VAFの変化量は早期の腫瘍径の変化よりも治療開始24週後の腫瘍径の変化量により相関した。また、VAFの低下した群では低下しなかった群に比べて24週での腫瘍が縮小することを示し、このことは治療早期ではみられなかった。 これらの結果は、ICIを投与したNSCLCにおいて早期の画像評価が困難な症例においても、リキッドバイオプシーが治療の有効性の判定に有用である可能性を示唆している。ICIの有効性と予後に関する予測精度を高めるためには更なる研究が不可欠であるものの、今回の結果が、ICIの効果判定法の開発の一助となると考えられる。
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