研究課題/領域番号 |
21K15554
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 道春 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00795437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬物送達治療 / 集束超音波 / バブルリポソーム / 血液脳関門 / 悪性神経膠腫 / 脳移植マウス / テモゾロミド / ドキソルビシン |
研究実績の概要 |
悪性神経膠腫は手術摘出による完全治癒が困難であり、放射線や化学療法といった後療法に対しても抵抗性である。薬剤抵抗性の主要因として血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)の存在による薬剤送達(drug-delivery system: DDS)の問題が挙がる。近年、頭蓋内疾患用の経頭蓋MRIガイド下FUS装置が開発、臨床導入され、神経変性疾患や脳腫瘍分野では、超音波の振動作用を利用した低エネルギー照射による「脳内選択的および限局的なBBBの一時開口」によるDDSへの応用が期待されている。 本研究では悪性神経膠腫モデルに対しバブルリポソーム(bubble lipopolyplexes: BL)製剤と集束超音波(focused ultrasound: FUS)装置を用いてBBBを開口させ、3次元薬物動態解析により安全で有効なDDSを実現し、ヒト悪性神経膠腫における化学療法の治療効果の向上を目的とする。 正常および免疫不全マウスに対しBLとエバンスブルーを静注後、頭部にFUSを照射しBBB開口の効果と安全性を評価しBL量、超音波照射条件(照射強度、照射時間、Duty Cycle)を最適化した。また、U87MGヒト悪性神経膠腫細胞株脳移植マウスの作成に成功し、組織透明化技術を用いた共焦点顕微鏡による3次元解析手技を習得、確立した。 今後は、IVISを用いた継時的脳腫瘍評価手技を獲得し、同U87MGヒト悪性神経膠腫細胞株脳移植マウスに対しBL投与後にテモゾロミド(temozolomide: TMZ)もしくはドキソルビシン(doxorubicin: DXR)を静注しFUSを照射する。BBB開口と組織内薬物動態を脳組織透明化技術で3次元的に解析し、IVIS(in vivo imaging system)による継時的腫瘍変化と生存期間、病理組織学的検討から抗腫瘍効果と有害事象を比較検証する方針。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、正常ラットに対しBLとエバンスブルーを静注後、頭部にFUSを照射しBBB開口の効果と安全性を評価しBL量、超音波照射条件(照射強度、照射時間、Duty Cycle)を最適化した後、F98悪性神経膠腫細胞株脳移植ラットに対しBL投与後にTMZもしくはDXRを静注しFUSを照射。BBB開口と組織内薬物動態を脳組織透明化技術で3次元的に解析し、IVISによる継時的腫瘍変化と生存期間、病理組織学的検討から抗腫瘍効果と有害事象を比較検証する予定であった。 予備実験を進めていく中、正常ラットではF98細胞株の移植モデル手技をすでに確立しており、モデル作成にかかるコストも安価に収まる考えであった。しかし、ラットはマウスの10~20倍の体重でありバブルや抗癌剤などの薬剤の量および費用も同様であり、本研究の将来的な展開として脳腫瘍症例からの初代培養移植株を用いた研究まで目標にすると、免疫不全マウスを用いたモデル作成を行うことが理想という判断に至った。 上記を理由に 正常および免疫不全マウスに改め、BLとエバンスブルーを静注後、頭部にFUSを照射しBBB開口の効果と安全性を評価しBL量、超音波照射条件(照射強度、照射時間、Duty Cycle)を最適化した。更に、U87MGヒト悪性神経膠腫細胞株脳移植マウスの作成に成功し、組織透明化技術を用いた共焦点顕微鏡による3次元解析手技を習得、確立した。
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今後の研究の推進方策 |
今現在、U87MGヒト悪性神経膠腫細胞株脳移植マウスに対する、目標の脳局在への移植手技の再現性の向上を目指している。加えて、照射実験のスケジュールを組むために、コントロールとなる生存期間の把握とIVISを用いた継時的脳腫瘍評価手技を獲得を直近の目標としている。 今後は、同U87MGヒト悪性神経膠腫細胞株脳移植マウスに対しBL投与後にTMZもしくはDXRを静注しFUSを照射。BBB開口と組織内薬物動態を脳組織透明化技術で3次元的に解析し、IVIS(in vivo imaging system)による継時的腫瘍変化と生存期間、病理組織学的検討から抗腫瘍効果と有害事象を比較検証する方針である。 具体的には、1.悪性神経膠腫モデルにおいて、BLとFUSでBBBを開口しTMZとDXRを送達可能か?両抗癌剤の治療効果に差はあるのか? 2.悪性神経膠腫モデルでのBBB開口後、BLとTMZ、DXRはどのように組織内に分布するのか?治療効果の差に関与するのか? を検証する。 BBB開口による膠芽腫治療の基礎研究においてはTMZやDXRなどの抗癌剤による照射部位の薬物濃度の上昇と抗腫瘍効果の向上が明らかにされ、臨床研究が進行中であるが、いずれも詳細な組織内薬物動態については未だ明らかにされていない。血管密度や構造など微小環境が全く異なる腫瘍近傍正常組織、腫瘍辺縁部、腫瘍内部においてどのような抗腫瘍効果と有害事象、組織内薬物動態を示すかどうかは、最大限の安全性と有効性を得るための至適照射領域決定の際に非常に重要な問題であり、上記2項目の検索結果から、本研究課題の核心をなす学術的「問い」への一つの解答が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行による流通障害からの薬剤、実験動物の納入遅延の影響は非常に大きい。また、海外・国内での学会発表含め出張規制が通年実施されたことでWeb会議中心となり、実験手技における細かいチップスなどの情報交換が直接面会に比すると劣ってしまい、円滑な研究進行に支障が生じ、次年度使用額が生じた。 次年度は本実験としてモデル動物への照射実験が本格化し、IVISや抗癌剤、免疫不全マウス、3次元解析における免疫染色試薬などの購入が多くなるため、次年度使用額も合わせての使用が必須と考えられる。
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