研究課題
ヒストンH3K27メチル化酵素(GSK126またはEPZ-6438)およびヒストンH3K9メチル化酵素G9a阻害剤(UNC0638またはUNC0642)の抗腫瘍効果をin vitroおよびin vivoで検証した。それぞれ単剤および併用で骨髄腫細胞を処理し、cell viabilityアッセイ、アポトーシスアッセイ、細胞周期アッセイにより増殖抑制効果を検証した。その結果、複数の細胞株においてGSK126・G9a単剤よりも両者の併用が高い増殖抑制効果を示した。また腫瘍細胞をGSK126・UNC0538で処理し、免疫不全マウスの皮下に移植した結果、コントロール群と比較して顕著な腫瘍形成抑制効果が認められた。多発性骨髄腫の臨床例におけるEZH2およびG9a (EHMT2)発現の臨床病理的重要性をGene Expression Omnibusのデータベース(GSE6477、GSE5900、GSE4581)を用いて検証した。EZH2およびEHMT2の発現は臨床病期の進行に伴って発現上昇が認められた。またEZH2・EHMT2の発現上昇は予後不良と相関した。これらの結果から、EZH2・EHMT2は多発性骨髄腫の進展や悪性化に関与することが示された。これまでの解析から、EZH2・G9a阻害が免疫応答およびインターフェロンシグナルを活性化するとともに、MYCやIRF4など骨髄腫の生存に必要なシグナルを抑制することを見出している。今年度はEZH2・G9a阻害がエピゲノムに与える影響を解析するため、ヒストンH3K27トリメチル化(H3K27me3)およびヒストンH3K9ジメチル化(H3K9me2)をクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seeq)により解析した。その結果、内在性レトロウイルス領域におけるこれらのヒストン修飾の低下を見出した。ERV-I、ERV-Fc2、envW、HML-2など代表的な内在性レトロウイルス発現を定量RT-PCRにて解析した結果、EZH2・G9a阻害によりこれらが発現誘導されることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
EZH2とG9aの共阻害による抗腫瘍効果を、in vitroおよびin vivo実験から明らかにすることができた。抗腫瘍効果のメカニズムとして、インターフェロン応答の活性化、増殖シグナルの抑制、アポトーシスの誘導があることを明らかにすることが出来た。またEZH2とG9aの臨床病理的な重要性を明らかにすることができた。さらにEZH2とG9aの共阻害がヒストン修飾(H3K27me3、H3K9me2)に与える影響を網羅的に解析し、内在性レトロウイルス領域の活性化が誘導されることを明らかにすることができた。
EZH2とG9aの抗腫瘍効果に関して、解析を継続する。EZH2とG9aの共阻害によるインターフェロン応答のメカニズム解明のため、共阻害が細胞のトランスクリプトーム・エピゲノムに与える影響を網羅的に解析する。またEZH2とG9aの共阻害が内在性レトロウイルスの発現に与える影響を解析する。
予定していた学会出張が、リモートによる参加となったため、旅費を使用しなかった。次年度は、実験のため物品費、学会出張、実験補助員の謝金として使用する予定である。
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Journal of Gastroenterology and Hepatology
巻: 38 ページ: 301~310
10.1111/jgh.16055