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2022 年度 実施状況報告書

膜タンパク質を利用した肺腺がん早期診断マーカーの獲得と実用化に向けた基礎的検討

研究課題

研究課題/領域番号 21K15559
研究機関北里大学

研究代表者

朽津 有紀  北里大学, 医療衛生学部, 助教 (70878272)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード肺腺がん / 早期診断マーカー / 膜タンパク質
研究実績の概要

肺がん全体の半数以上を占めている腺がんは特有の症状がないまま進行するため、身近な検査で早期がんを検出可能なマーカーの獲得が求められている。膜タンパク質は細胞外に分泌される分子も多く存在することから血清診断マーカーとして有用である。本研究では新たな診断マーカーとなり得る候補分子の探索のため、膜タンパク質に焦点を当てたショットガン解析を行い、肺腺がん細胞特異的に発現している膜タンパク質を網羅的に同定した。以下に実施した概要を示す。異なる3種類の肺がん細胞株(腺がん由来:A549細胞、扁平上皮がん由来:RERF-LC-AI細胞、小細胞がん由来:N231細胞)それぞれに対して、細胞表面タンパク質単離キットを使って膜タンパク質を回収した。これらの回収した膜タンパク質分画は質量分析装置を用いたショットガン解析を行うことにより、網羅的にタンパク質を同定した。その結果、それぞれ1100個、1742個、1193個のタンパク質が同定された。このうち、3種類の細胞すべてにおいて同定されたタンパク質は549個あり、A549細胞のみに同定されたタンパク質は254個、RERF-LC-AI細胞では630個、N231細胞では214個であった。また、細胞膜局在が報告されている膜タンパク質は、それぞれ71個、91個、53個であった。同定された膜タンパク質のうち、A549細胞にだけ発現していた膜タンパク質にはIntegrin beta-4(ITGB4)やATP-binding cassette sub-family C(ABCC3)などが含まれていた。今後、これらの同定されたタンパク質について肺腺がん細胞での発現と細胞外への分泌を確認し、さらに組織診断、並びに血清診断マーカーとしての有用性についても検討を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

3種の肺がん細胞株から回収した膜タンパク質を同定するにあたり、質量分析装置に不具合が生じ、調整に時間を要したため、当初の計画にあった肺がん組織での発現の確認までには至らなかった。現在は各細胞株における膜タンパク質の同定は完了しており、診断マーカーの候補となる分子の絞り込みを行っている。これらのマーカー候補分子の肺がん細胞株における発現の確認および培養上清中への分泌の確認も進めており、今後は計画の遅れを取り戻すべく、肺がん組織における発現の確認を早急に行う予定である。

今後の研究の推進方策

今年度計画している研究項目は以下の3つである。
①肺がん細胞での発現と培養上清中への分泌の確認:肺腺がん細胞株のみに発現が認められた膜タンパク質を対象として、組織型の異なる3種の肺がん細胞株を用いた免疫ブロット法と免疫染色法を行い、候補タンパク質の発現量とその局在を確認する。細胞膜局在の確認が取れた候補タンパク質については、肺がん細胞株の培養上清から抽出したタンパク質を対象とした免疫ブロット法により、細胞外への分泌の有無を確認する。
②肺がん組織での発現の確認:肺がん組織マイクロアレイを用いた免疫染色法により、肺がん組織においても細胞膜局在であり、腫瘍特異的な発現であるか、あるいは正常組織に比して高発現しているかについて確認することで候補となる膜タンパク質のさらなる絞り込みを行う。
③血清診断マーカーとしての有用性の評価:肺がん患者血清並びに健常者血清を用いたELISA法により候補となる膜タンパク質の血中レベルを測定するとともに、患者の臨床情報との相関関係についても解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

肺がん細胞から回収した膜タンパク質を同定する質量分析装置の調整に時間を要したため、肺がん組織の免疫染色法に関する費用の執行がなかった。これらの費用については次年度に当初の計画通り免疫染色法の費用として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Diagnostic significance of NAP1L1 expression in patients with lung adenocarcinoma2022

    • 著者名/発表者名
      Nagashio Ryo、Kuchitsu Yuki
    • 雑誌名

      Electrophoresis Letters

      巻: 66 ページ: 9~11

    • DOI

      10.2198/electroph.66.9

    • 査読あり
  • [学会発表] LRRK2はAKTおよびSTAT3のリン酸化を介して肺腺がん細胞の遊走能を調節する2022

    • 著者名/発表者名
      今井基貴, 川上文貴, 川島麗, 朽津有紀, 西原奈菜枝, 田村慶介, 一戸昌明, 村雲芳樹, 長塩亮
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 肺がん細胞の膜タンパク質を用いた診断マーカー候補分子の探索2022

    • 著者名/発表者名
      朽津有紀, 西原奈々枝, 小寺義男, 田村慶介, 今井基貴, 土屋紅緒, 村雲芳樹, 三枝信, 長塩亮
    • 学会等名
      日本プロテオーム学会2022年大会
  • [学会発表] 肺腺がん細胞の遊走能獲得におけるLRRK2の機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      今井基貴, 川上文貴, 川島麗, 朽津有紀, 西原奈々枝, 田村慶介, 一戸昌明, 村雲芳樹, 長塩亮
    • 学会等名
      日本プロテオーム学会2022年大会
  • [学会発表] 尿中抗体を利用した膀胱がん関連タンパク質の同定2022

    • 著者名/発表者名
      長塩亮, 朽津有紀, 今井基貴, 西原奈々枝, 田村慶介, 松本和将
    • 学会等名
      第73回日本電気泳動学会総会
  • [学会発表] 膜タンパク質を標的としたショットガン解析による肺腺がんマーカー候補分子の探索2022

    • 著者名/発表者名
      朽津有紀, 西原奈々枝, 小寺義男, 田村慶介, 今井基貴, 土屋紅緒, 長塩亮
    • 学会等名
      第73回日本電気泳動学会総会
  • [学会発表] 肺がんにおけるleucine rich-repeat kinase 2 (LRRK2)の機能的役割の解析2022

    • 著者名/発表者名
      今井 基貴, 川上 文貴, 川島 麗, 朽津 有紀, 一戸 昌明, 村雲 芳樹, 長塩 亮
    • 学会等名
      第111回日本病理学会総会

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公開日: 2023-12-25  

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