研究実績の概要 |
申請者は、16S rRNA 法による細菌叢解析により、卵巣癌患者の子宮頚部細菌叢は健常者のものと異なっていることを見出した。(A Morikawa et al, Gene2022)一般に閉経を迎えるとLactobacillus属が減少し、多様性に富んだ細菌叢に遷移することが知られている。卵巣癌患者の子宮頚部細菌叢検体では、その大多数で閉経後健常者と同じくLactobacillus属が減少し、多様性に富んだ細菌叢構造が観察され、これは閉経の有無によらなかった。欧州では卵巣癌患者の子宮頚部細菌叢解析が大規模に行われ(Nene NR et al, 2019 lancet oncol)、同様の結果が示されていると共に卵巣癌が発症していないBRCA遺伝子変異を有する健常人も卵巣癌患者同様の細菌叢パターンであることも報告された。 本研究では、1)さらに多数の卵巣癌患症例の子宮頚部細菌叢を解析してこれまでの知見を 確証すると同時に、2)卵巣癌患者の手術及び分子標的薬による治療後に経時的な子宮頚部-膣細菌叢解析を行い、子宮頚部-膣細菌叢の卵巣癌の病態における重要性を明らかにすることを目指す。3)またさらに、BRCA遺伝子変異を含む相同組換え修復異常(HRD)と子宮頚部-膣細菌叢の関係を解明することを目指す。4)また、子宮内膜症患者の0.7%から卵巣癌が発生することから子宮内膜症患者の膣細菌叢を経時的に解析することも検討する。現時点では膣細菌叢の解析方法の再検討およびリクルートする症例の最終検討および検体回収方法を検討中である。
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