研究課題/領域番号 |
21K15562
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
中山 淳 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 外来研究員(特別研究員PD) (30801237)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | scRNA-seq / DCIS / 浸潤性乳管がん / 乳がん / HER2陽性乳がん / 腫瘍内不均一性 / VARIED / 定量的ネットワークトポロジー |
研究実績の概要 |
乳がんにおいて、早期発見の25%は非浸潤性乳管がん(Ductal Carcinoma in situ, DCIS)である。このDCISから浸潤性がんへの移行が数十年を経ても生じない症例がある一方で、間質への目立った浸潤を起こすことなくDCIS細胞が多臓器へと転移し死亡に至る症例なども報告されている。本研究は、DCIS検体に対する1細胞発現解析を行うことで、DCIS組織中の不均一性を明らかにし、浸潤性乳管がんへの移行に重要ながん細胞集団や遺伝子を同定することを目的とした。また、定量的ネットワークトポロジーを用いて、細胞集団の不均一性を定義し、”DCIS to IDC仮説”のどちらが正しいモデルであるか検証した。 令和3年度の研究成果として、収集した臨床検体のシングルセルRNA-seq解析を実施し、LuminalサブタイプDCIS検体、Luminal-HER2サブタイプDCIS検体、Luminalサブタイプ原発腫瘍、HER2陽性サブタイプ原発腫瘍の統合解析を行った。その結果、DCISに特徴的な遺伝子をシングルセルレベルで抽出することに成功した。さらに、定量的ネットワークトポロジーを用いた遺伝子発現不均一性の解析VARIED法を開発した。このVARIED法を適用することで、乳がんにおける間質細胞の不均一性の増大を見出した。また、DCISがん細胞も多様性に富む組織であることがわかったことから、DCIS to IDC仮説は不均一進化モデルであることを示唆する結果を得た。このVARIED法によって、不均一性を定量的に議論することが可能となった。これらの結果を統合し、現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和3年度の研究成果として、収集した臨床検体のシングルセルRNA-seq解析をほぼ完了した。新たな不均一性解析手法を開発し、それらを適用したシングルセルRNA-seqの結果をまとめた。現在、論文投稿中であり、当初の予定よりも期待以上の進展をしている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に基づいて (1)投稿中の論文について、引き続き引き続き投稿作業とRevise実験を行う予定である。 (2)乳がんシングルセルRNA-seqメタ解析データセットの構築 完了した臨床検体のシングルセルRNA-seq解析に加えて、公共データベースに登録された正常乳腺、DCIS、乳がん、乳がん転移巣のシングルセルRNA-seqデータを統合し、よりロバストな解析を行う基盤を構築する。DCIStoIDCだけでなく、正常からDCISへの変化、IDCから転移巣への変化など、他の悪性化段階においても着目し、同様の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも実験費用を抑えた状態で論文投稿することができたため、差額が生じた。 投稿中の論文のRevise実験等に予算を再配分するため、翌年に繰り越しすることとした。
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