研究課題/領域番号 |
21K15568
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
作田 智彦 広島大学, 病院(医), 助教 (60878289)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 悪性腫瘍 / 骨肉腫 / 腫瘍溶解性ウイルス / カーボンナノチューブ / VSV |
研究実績の概要 |
単層性カーボンナノチューブ(CNT)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を混合して種々の濃度のCNT溶液を作成し、波長808nmの近赤外線レーザーを照射した際のCNT溶液の温度変化を経時的に測定したところ、すべてのCNT溶液で経時的に温度上昇を認めた。特に100μg/ml以上の濃度のCNT溶液では5分間で60度以上まで温度上昇を認めた。次いでCNTによる光温熱療法単独での骨肉腫に対する腫瘍殺傷効果を調べた。In vitroでは高肺転移性マウス骨肉腫細胞LM8にCNT溶液を混合して近赤外線レーザーを照射した際の腫瘍細胞殺傷効果を顕微鏡下及びWST-8 assayにて評価したところ、低濃度のCNT溶液を混合した場合においてもほぼすべての腫瘍細胞の殺傷効果を認めた。In vivoでは6週齢C3Hマウスの背部にLM8(1 X 107 cells)を移植し、骨肉腫マウスモデルを作成した。腫瘍径が10mmに達したことを確認後、CNT溶液を局注して近赤外線レーザーを1日あたり10分間、連続7日間照射し、その後腫瘍を辺縁切除して腫瘍体積及び腫瘍殺傷効果を確認した。腫瘍体積についてはCNT光温熱療法群は未治療群と比較し、有意に小さいことが示された。腫瘍殺傷効果についてはHE染色標本にて組織学的に評価したところ、ある程度の腫瘍壊死を認めた。よってCNTによる光温熱療法単独でもある程度の骨肉腫殺傷効果があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画調書の予定は概ねすべて完了した。 具体的には、単層性カーボンナノチューブ及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を混合してCNT溶液を作成し、CNT溶液に波長808nmの近赤外線レーザーを照射した時のCNT溶液温度変化を経時的に測定した。 マウス骨肉腫細胞LM8にCNT溶液を混合して近赤外線レーザーを照射した際の腫瘍細胞殺傷効果を経時的に顕微鏡下及びWST-8 assayにて評価した。 6週齢C3Hマウスの背部に高肺転移性マウス骨肉腫細胞LM8(1 X 107 cells)を移植して骨肉腫動物モデルを作成し、腫瘍径が10mmに達したことを確認後、CNTを局注して近赤外線レーザーを照射して経時的に腫瘍体積を測定し、腫瘍殺傷効果については腫瘍辺縁切除標本(HE染色)にて腫瘍壊死率を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後追加でカーボンナノチューブを購入する必要は出てくると思われるが、現在保有している設備にて研究を続行可能である。 引き続き研究計画調書の予定通りすすめていく。 具体的にはin vivoにて骨肉腫マウスモデルを作成してVSV-CNTを局注して、近赤外線照射による腫瘍殺傷効果を組織学的(HE染色)に評価する。 次いでIn vivoにてVSV単独投与群、CNT単独投与群、VSV-CNT投与群(各群とも10匹使用)それぞれ近赤外線照射後に腫瘍辺縁切除を行い、局所再発率(触知及び腫瘍周囲組織評価)、遠隔転移率(肺組織評価)、生命予後を比較解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため発表のための出張の機会が激減したため旅費が減少した。また、カーボンナノチューブの使用量が当初の予定よりやや少なかったため繰越金が生じた。 次年度は学会発表や論文投稿料に充てていく計画である。
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