研究実績の概要 |
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は、EBVに感染したT, NK細胞腫瘍である。現在、CAEBVの唯一の根治療法は造血幹細胞移植のみである。そのため、一刻も早い他の根治療法、治療薬の開発が求められている。 本年は、細胞生存に関与するBCL2ファミリータンパク質の1つであるBCL2に着目し、CAEBV治療のターゲットとしての可能性を検討した。まず、CAEBV等EBV陽性T, NK細胞株であるSNT8, SNT15, SNT16, SNK1, SNK6, SNK10におけるBCL2の発現をwestern blottingで確認した。次に、BCL2の阻害剤であるVenetoclaxを用いてCAEBV等EBV陽性T, NK細胞株を刺激した。Venetoclaxにより、6種類のEBV陽性T, NK細胞株全ての細胞増殖能が濃度依存的に抑制され、アポトーシスが誘導されることを確認した。さらに、Venetoclaxは、CAEBV患者由来末梢血単核球(PBMCs)の細胞増殖能を抑制し、炎症性サイトカインであるTNF-α, IFN-γ, IL-6のmRNA発現を低下させることを明らかにした。 これらのin vitroの結果から、BCL2阻害薬であるVenetoclaxによるCAEBVの腫瘍及び炎症の両側面への効果が期待された。そこで、CAEBVモデルマウスを作成し、in vivoでの検証を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めているin vivoでの検証を行うと共に、BCL2以外の治療候補因子についても検討を進めていく。 引き続きCAEBV患者PBMCsを収集し、抗体付き磁気ビーズを用いてCD4, CD8, CD56, CD19陽性細胞、さらに単球を分離し、保存する。集めた患者検体(DNAサンプル)を用いて、EBV陽性細胞と非感染細胞との違いを、全エクソンシーケンスを施行し比較する。RNAサンプルは、マイクロアレイRNAseqを用いたトランスクリプトーム解析により検証する。
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