研究実績の概要 |
BCL2 (B-cell lymphoma 2) ファミリー蛋白であるBCL2は慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫など多くの造血器腫瘍において抗アポトーシス因子として働いている。EBV陽性T, NK細胞株と患者由来末梢血単核球 (PBMC) におけるBCL2の発現、さらにin vitroにおけるBCL2阻害剤VenetoclaxがCAEBV患者PBMCの細胞増殖や炎症性サイトカインの産生を抑制し、CAEBV症状の抑制に寄与する可能性を報告した。本年度はin vivoにおいてVenetoclaxがCAEBVの新規治療薬として有効であるか検討することを目的とし、作製したCAEBVマウスモデルを用いてVenetoclax投与実験を施行した。CD4陽性細胞感染タイプ、CD56感染陽性細胞タイプのCAEBV患者PBMCをNOGマウスにそれぞれ尾静脈移植し、CAEBV患者由来異種移植 (Patient-derived xenograft: PDX) モデルマウスを作成した。Venetoclaxを4日間投与し、5日目に解剖し、腫瘍形成予防効果と抗炎症作用を、リアルタイムPCR法、組織染色法、ELISA法 (サイトカイン) を用いて検証した。Venetoclax非投与群で脾腫を呈する個体がみられ、EBVゲノム発現とヒト腫瘍細胞の密な増殖を観察した。Venetoclax投与群の肝臓では、門脈域と類洞内においてEBER陽性細胞の浸潤抑制がみられた。これらの結果より、Venetoclaxによる腫瘍形成予防効果が示唆された。ELISA法を用いて炎症性サイトカインIFN-g値を測定したところVenetoclax投与群で低値を示し、Venetoclaxによる抗炎症効果が示唆された。VenetoclaxはCAEBVマウスモデルにおいて腫瘍形成予防効果、抗炎症効果を示した。以上より、VenetoclaxはCAEBVの主要症状を抑制する作用を持ち、VenetoclaxがCAEBVの新規治療薬となりうる可能性が示唆された。
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