本研究は、胸部悪性腫瘍患者の生体試料(血液検体、末梢血単核球、病理組織)を用いて急性炎症および悪液質状態下の免疫抑制機構を解析することで、急性炎症や悪液質の克服を目指す基盤研究につなげ、がん患者の予後改善及び免疫チェックポイント阻害剤の治療効果改善など今後の臨床応用への発展を目指す研究である。 これまで進行期肺癌患者の臨床検体を用いて、遺伝子変異および遺伝子発現解析を行い、 腫瘍のいくつかの遺伝子変異のステータス自体(TP53やSMACA4など)が、有意に悪液質の発症に相関していることを発表した。急性炎症および悪液質状態下の肺癌患者における免疫チェックポイント阻害剤の治療効果および腫瘍の遺伝子発現の状況との関連についての検討は終了している状態である。 一方で、遺伝子変異のステータスと炎症性サイトカインに関わる遺伝子発現および悪液質の発症メカニズムについてはオミックス解析を中心について検討を行っているが、特定の遺伝子変異以外の新たな発症メカニズムおよび新規治療標的の同定には至っていないのが現状である。また患者由来の末梢血単核球を用いた全身性免疫(免疫老化を含めた)の検討については、テロメア解析などの手法は確立し、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果との検討を行ったが明確な結論には至ってない。引き続き検討を行っていく。
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