研究課題/領域番号 |
21K15594
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠藤 翔 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (20801749)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌 / 膵星細胞 / 小胞体ストレス / 治療抵抗性 / ERAP2 / 癌微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究は膵星細胞のERストレス経路に着目し、膵癌の進展や既存治療に対する抵抗性に寄与するメカニズムを解明することである。我々は既に手術切除標本から得られた膵癌組織由来の活性化ヒトPSC(M-PSC)と非膵癌組織由来の非活性化ヒトPSC(N-PSC)をマイクロアレイに提出し、遺伝子発現を比較することで、M-PSCで小胞体関連遺伝子が有意に発現上昇していることを同定した。そのうちの1つである遺伝子ERAP2に着目した。まずsiRNAのトランスフェクションを用いてPSCにおいてERAP2をノックダウンすると、αSMAの低下、脂肪滴の増加を確認し、PSCの不活性化につながり、癌間質相互作用の減弱に寄与することが分かった。我々は以前に、PSCがAutophagyを介して活性化していることを報告しており、ERAP2をノックダウンした場合のPSCにおけるAutophagy活性を調べたところ、LC3の減少、p62の増加を認め、PSCのAutophagyも抑制されていることが分かった。また、PSCにおいてERAP2をノックダウンすると、小胞体ストレス誘導剤tunicamycinを投与しても、unfolded protein response(UPR)シグナル経路のIRE1αおよびPERKの上昇が抑制されており、ERAP2は小胞体のUPRシグナル経路を介したオートファジー制御に関与している可能性が示唆された。次に免疫不全マウスを用いたPSCと膵癌細胞の同所移植モデルにおいて、ERAP2をノックダウンしたPSCを膵癌細胞と共移植した場合、通常のPSCを膵癌細胞と共移植した場合と比較して、腫瘍形成が有意に抑制された。さらにゲムシタビンを投与するとERAP2のノックダウン群で腫瘍の増殖が有意に抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手術切除標本から得られた膵癌組織由来の活性化ヒトPSC(M-PSC)と非膵癌組織由来の非活性化ヒトPSC(N-PSC)のマイクロアレイ解析結果より、小胞体ストレスに関連する遺伝子を同定した。また、膵癌細胞との同所移植モデルにおいて膵癌の増殖、線維化を抑制し、ゲムシタビンによる抗腫瘍効果を増強することを確認した。小胞体関連遺伝子であるERAP2はUPRシグナル経路を介してオートファジーを制御している可能性が示唆された。さらにPSCにおけるERAP2の抑制効果をin vivoの移植マウスモデルを用いて示し、これらの結果を論文にまとめて報告した。研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、マイクロアレイの解析結果より、ERAP2以外にも小胞体に関連した遺伝子を複数同定している。そのほかの遺伝子に関しても今後、さらなる検証を行う予定である。 また、我々は癌細胞におけるERAP2の発現も確認しており、現在癌細胞におけるERAP2抑制効果の検証を行っているところである。また、ERAP2は小胞体内でペプチド合成に関わるgeneであり、免疫回避にも関わることが予想されるため、今後は癌細胞、PSCにおいてERAP2を抑制した場合の腫瘍免疫への影響も検証していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。次年度は研究用試薬、抗体、実験用マウスの費用に使用予定である。
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