研究課題
本研究は膵星細胞のERストレス経路に着目し、膵癌の進展や既存治療に対する抵抗性に寄与するメカニズムを解明することである。我々は既に手術切除標本から得られた膵癌組織由来の活性化ヒトPSC(M-PSC)と非膵癌組織由来の非活性化ヒトPSC(N-PSC)をマイクロアレイに提出し、遺伝子発現を比較することで、M-PSCで小胞体関連遺伝子が有意に発現上昇していることを同定した。そのうちの1つである遺伝子ERAP2に着目した。すでにR3年度の時点で、膵星細胞におけるERAP2が小胞体ストレス経路を介してオートファジー制御に関わっていることを明らかにし、これらの新たな知見を論文にまとめて報告した。そのため、ERAP2が膵癌微小環境において重要な治療標的となりうるかをさらに検証することとし、R4年度は、癌細胞におけるERAP2の役割を検証した。まず、ヒト膵癌切除標本を用いてERAP2の発現を確認したところ、CAFのみならず膵癌細胞においても広く発現していることが分かった。さらに、ERAP2発現が高い群(High)と低い群(Low)に分けて生存解析を行ったところ、High群と比較してLow群では有意に予後が良好であることが明らかになった。そこで、癌細胞のERAP2をノックダウンした際のオートファジー活性を検証したところ、期待通り、ERAP2抑制により癌細胞のオートファジーが抑制されることが明らかになった。
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