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2022 年度 実施状況報告書

膵癌転写調節領域を指標にした抗がん剤耐性に関与するマスター分子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K15597
研究機関鹿児島大学

研究代表者

田中 貴子  鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (50866415)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードスーパーエンハンサー / 膵癌 / マスター分子
研究実績の概要

現在、膵癌治療において最も重要な役割を占めているのは化学療法である。近年、癌のサブタイプに応じた治療最適化が進められているが、膵癌においてはまだ確立されていないという現状がある。治療開始直後に有効だった薬剤が、癌細胞の治療抵抗性の獲得によって、治療経過とともに効果を失うことがしばしばある。このような治療抵抗性に対して、早急に新しい治療法を開発する必要がある。
最近、細胞の運命を決定する重要な領域として、「スーパーエンハンサー(SE)」と呼ばれる転写制御領域が注目を集めている。この領域は、細胞の運命を決定する機能性分子を発現誘導するために形成される。抗癌剤に暴露された場合、癌細胞は自己の生存のためにSEを形成し、抗癌剤耐性に関与する機能性RNA分子を発現すると考えられている。SEは、ヒストンH3K2のアセチル化が広範囲にわたって起こっているゲノム上の領域であり、転写因子やコファクターと共に、高い転写活性を持つ大きな複合体を形成しており、SEから転写される遺伝子群は、細胞の運命を決定するために必要な「マスター遺伝子」と呼ばれる重要な遺伝子群であることが報告されている。
申請者は、これまでに作成した「膵癌・機能性RNA発現プロファイル」をもとに、抗癌剤暴露時のSE情報を統合することで、抗癌剤耐性に関与する「マスター分子」の同定を進めている。これにより、治療抵抗性を克服する新しい治療法の開発につながることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、膵癌細胞に抗癌剤を投与し、時間が経過するにつれて形成されるスーパーエンハンサー領域を検出することを目的としている。SEは、転写を活性化するための重要な領域であり、ChIP-sequenceを用いた免疫沈降法で検出することができる。この研究では、H3K27AC、BRD4、MED1といった抗体を使用する予定で、また、ATACシークエンス法を用いて、オープンクロマチン領域の情報を取得し、次世代シークエンサーと組み合わせることで、転写が活性化されている場所と頻度を同定できる。この研究では、ChIP-sequenceとATACシークエンスによる解析を並行して行い、スーパーエンハンサーの形成に関連する転写制御機構を解明することを目指す。これにより、膵癌細胞における転写制御機構の理解が深まり、より効果的な治療法の開発に繋がることが期待される。

今後の研究の推進方策

本研究では、抗癌剤耐性に関与する機能性RNA分子の時間的階層性を探索し、その中から「マスター分子」を特定し、その役割を検討する。具体的には、シスプラチン耐性やゲムシタビン耐性細胞から「マスター分子」をCRISPR-Cas9によるゲノム編集技術で機能消失させ、耐性が解除されるかどうかを検討する。もし、抗癌剤耐性に関与する「マスター分子」が見つかれば、低分子化合物の探索を行うためにin silico解析によるドッキング・シミュレーションを実施することが計画されている。本研究によって、抗癌剤耐性の解明に向けた新たな知見を得ることが期待されているのである。

次年度使用額が生じた理由

学会参加時の旅費に使用する予定だったが、ハイブリッド開催が行われず現地開催のみとなったため参加が叶わなかった。来年度以降の学会参加費に使用の予定である。
また、水平震盪器を注文予定だったが物流の都合により納入の目処が立たず、次年度に購入して使用の予定としている。

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公開日: 2023-12-25  

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