研究課題
脱分化型脂肪肉腫は、MDM2遺伝子およびCDK4遺伝子を含む染色体12q13-15領域の高度増幅を特徴とし、成熟脂肪組織に似る高分化成分と非脂肪性組織である脱分化成分によって構成された軟部腫瘍である。異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫の約10%が経年的に脱分化型脂肪肉腫に移行する脱分化現象が知られ、いわゆる多段階発がんを来す腫瘍であるが、残りの約90%は新規腫瘍として発症するとされ、脱分化現象のメカニズムについては未だ明らかになっていない。本研究では、3症例の脱分化型脂肪肉腫を対象として、計29箇所(高分化成分11箇所、脱分化成分18箇所)の腫瘍組織検体を採取して全エクソンシークエンスを施行し、その腫瘍内不均一性を検討した。高分化成分検体では平均24.4個の変異と13.6個のコピー数異常が、脱分化成分検体では平均55.9個の変異と26.9個のコピー数異常が検出され、脱分化成分でより多くの遺伝子異常が蓄積していた。また、各検体に固有の遺伝子異常として、高分化成分検体では平均8.8個の変異と0.4個のコピー数異常が、脱分化成分検体では平均8.8個の変異と1.7個のコピー数異常が検出され、両成分において同程度の不均一性が観察された。一方、各症例において、全検体で共通した遺伝子異常(変異+コピー数異常)はそれぞれ4、26、2個なのに対し、高分化成分の全検体で共通した遺伝子異常は27、0、12個、脱分化成分の全検体で共通した遺伝子異常は55、26、81個であった。これらの結果から、少なくとも一部の脱分化型脂肪肉腫においては、腫瘍発生の極めて早期に高分化クローンと脱分化クローンは分岐し、それぞれが別個にクローン進化した後に多様性を獲得して高分化成分と脱分化成分を形成していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに進捗している。
今後は、DNAメチル化アレイによるエピゲノム解析およびRNAシーケンスによる遺伝子発現解析を予定している。
学会の現地参加が難しい状況であったのでWeb参加とした。購入予定であった試薬が、情勢不安のため年度内入荷の目途がたたなかった。上記理由により執行計画が変更となった。
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