研究課題
脱分化型脂肪肉腫は、染色体12q13-15領域の高度増幅を特徴とし、高分化(以下、WD)成分と非脂肪性の増悪である脱分化(以下、DD)成分によって構成された軟部腫瘍である。脱分化の明確なトリガーは解明されていないため、多領域解析を行い、そのクローン進化を推定した。3症例の脱分化型脂肪肉腫を対象として、10サンプルずつ腫瘍組織検体を採取し、1)ゲノム(全エクソームシーケンス)、2)エピゲノム(DNAメチル化アレイ)、3)トランスクリプトーム(RNAシーケンス)の多領域解析を実施した。1)各症例内の全サンプルに共通した体細胞遺伝子異常(変異+コピー数異常)は12q13-15高度増幅を含む4、26、2個だったのに対し、同一成分(WDまたはDD)内の全サンプルに共通した遺伝子異常は、WDで27、0、12個、DDで55、26、81個であった。3例中2例においては、全サンプルに共通するものが少なく、WD成分とDD成分が早期に枝分かれするクローン進化が推定された。2)WD成分は全症例において正常脂肪と類似したDNAメチル化パターンを有していたが、DD成分は症例間で傾向が異なり、症例特異的な脱メチル化が広い領域で生じていることが明らかとなった。また、メチル化パターンから予測された系統樹は、遺伝子異常から予測された系統樹と類似していた。3)WD成分・DD成分間で脂肪分化・形成に関連する遺伝子の発現に差が見られたが、そのパターンは症例間で異なっていた。一部では、CpGアイランドのメチル化状態と発現の相関が見られた。本研究によって、一部の脱分化型脂肪肉腫においてはWD成分とDD成分が腫瘍形成の初期に分岐し、別々のクローン進化を遂げていることが明らかになった。また、脂肪分化・形成に関連する遺伝子の発現及びDNAメチル化パターンから、脱分化にDNAメチル化異常が寄与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに進んでいる。
研究結果をまとめて、論文化を行う予定である。
国際学会に参加予定であったが,状況を鑑みて見送った.解析費用を見込んでいたが予定が変更となった.以上の理由などから執行計画に変更が生じた.持ち越した予算は、予定している解析にかかる費用等へ充てる計画としている
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