研究課題/領域番号 |
21K15608
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
須田 悠紀 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60775675)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 位相同期 / MT-LIP野 / 状況に応じた判断 / タスクスイッチ課題 / サル / 機能結合 |
研究実績の概要 |
様々な環境下で最適な行動を選択するためには、外界の状況に応じて適切に判断しなければならない。我々は、2つの判断課題をランダムに切り替えるタスクスイッチ課題をサルが行っている際、課題状況に応じた神経活動の変化が、感覚表象のMT野ではなく判断形成に関わるLIP野で生じていることを明らかにした。本研究では、表象された感覚情報を状況に応じて適切に読み出し判断するための相互神経ネットワークを明らかにする。そのため、状況に応じた判断が求められるタスクスイッチ課題を行うサルのMT野とLIP野から同期活動を計測し、両領野間の機能結合ダイナミクスを調べた。 MT・LIP野へ刺入した電極からタスクスイッチ課題時の局所電位(Local Field Potentail)をニホンザル2頭から測定し、両領野間の位相同期をPLV(Pairwise Locking Value)、PPC(Pairwise Phase Consistency)、dWPLI(debiased Weighted Phase Lag Index)から評価した。その結果、視覚刺激から眼球運動までの判断を形成する時間帯で、β帯域(14~30Hz)とGamma帯域(30~60Hz)でMT-LIP野間の同期活動が生じていることを認めた。これら同期活動は、眼球運動前500ms区間において、課題遂行に不必要なMT-LIP野ニューロンの組み合わせよりも、課題遂行に必要なMT-LIP野ニューロンの組み合わせで大きく生じていた。これらのことは、β帯域とGamma帯域の同期活動が状況に応じた適切な判断の形成に寄与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題に依存した位相同期が感覚-判断領野(MT-LIP野)間のβ帯域とγ帯域で生じていることを2頭のサルで明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
サル2頭目からのデータ取得を継続しながら、位相同期の方向性を明らかにするためのPhase Slope Index解析やGranger Causality解析を進める。さらに、より大規模ニューロン集団における位相同期の計測に向けて、多点電極の導入を進める。また、学会発表(国内1、国外1)に向けた準備とともに、論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
多点電極と多点電極を装備できる大型マニピュレーターを計上していたが、現時点において導入を見送っている。その理由は、多点電極よりも単一電極の方が領野及びニューロン特性の同定がしやすく、タスクスイッチ課題の視覚刺激を最適化する観点からは、単一電極の方がより優れていると判断したためである。単一電極で研究目的に沿った同期活動を二頭のサルで捉えることができたため、より大規模ニューロン集団における位相同期の計測に向けて、多点電極の導入を進めていく予定である。また、眼球運動計測に用いているアイコイルシステムの動作状況が不安定なため、新たな計測システムの導入も検討する。
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