| 研究課題/領域番号 |
21K15612
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
近藤 将史 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (80879776)
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| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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| キーワード | 神経科学 / 二光子カルシウムイメージング / 費用対効果 |
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| 研究実績の概要 |
動物は行動に伴うコストを最小化しつつ，得られる報酬を最大化するよう振る舞う.この意思決定に際して，環境からの感覚刺激や行動に伴うコスト，行動の結果得られる予測報酬といった複数の異なる情報が単一神経細胞レベルでどのように統合されているかはよくわかっていない.
本研究では『行動コストと得られる報酬のバランス(コストパフォーマンス)にもとづく意思決定課題の構築』と『他領域からの入力と神経細胞の局所活動および他領域への出力を反映する細胞活動を同時に観察可能な要素技術の開発』を通じて，合理的意思決定を行うマウス前頭皮質の単一細胞における入出力の変換過程を明らかにすることを目指す.
2021年度は研究開始当初の予定であった，『頭部固定下マウスにおける『費用対効果』にもとづく意思決定行動課題の構築』を主に推進した． 頭部固定下のマウスが一定距離を走破することで水を報酬として得ることができる，いわゆる『かけっこ』のような行動課題を構築した．マウスが回し車（ホイール）上を走るとその距離に応じて低音から高音へ変化する音声フィードバックが与えられることで，マウスがスタート-ゴール間の現在地を知ることができるようにした．このような状況で，報酬を得るまでにマウスが走る必要のある距離を操作した．当該課題をマウスに行わせたところ，実施した個体のほとんどすべてが頭部固定条件下であるにも関わらず，報酬を得るために自由行動下で報告されているのと同程度の速度でホイール上を走り，報酬を得ることができた．またレバーを用いた先行研究で見出されたのと同様，コストに対して期待される報酬が小さい場合，報酬を得るために行動することをやめる傾向が見られた．このことから今回作成した課題装置において，走行距離によって規定される行動コストに依存した行動課題構築に概ね至ったと考えられる．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2022年度に計画していた『頭部固定下マウスにおける『費用対効果』にもとづく意思決定行動課題の構築』に関して，装置作成および課題構成の検討を行い，行動コストの大小によって行動決定を行う課題が概ね完成した．
同時に予定していた『高速焦点移動装置の安定性向上』については根本的な解決ができていないため，来年度も引き続き改良を行う．
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| 今後の研究の推進方策 |
皮質1層の樹状突起先端と5層に位置する細胞体の活動を同時に二光子カルシウムイメージングするために用いる高速焦点変更装置について，焦点移動の高速化とともにデータ取得中の安定性向上のためのパラメータ探索を進める．
行動課題については，これまでは自由行動条件の動物において『高い壁を超えた先に置かれたたくさんの報酬』と『平坦な道の先にある少しの報酬』のどちらを動物が選択するか，という課題が広く用いられてきた．また実験室環境のマウスはホイール上を走ることを好むことが知られており，今回設定した走行距離の長短が十分に行動コストとして機能していない可能性も考えられる．2023年度は走行距離に加えて，ホイール回転に摩擦を与えて回転のしやすさを変えることで，得られる報酬に対して行動コストが大きい/小さい場合での行動選択のバイアスが見られるか検討する．
また上記2点を組み合わせ，実際に神経活動計測を開始する予定である．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入を予定していたマウス頭部固定訓練装置について，当初の要求仕様での製造がCOVID19の物流遅延などによって難しくなったため，購入を見送っている．概ねこのための申請額について，次年度使用が生じた．
当初はこの装置を用いて行動訓練を並列化することでスループットを向上させる予定であったため，要求仕様の変更または部材調達からの自作も視野に入れ，2022年度に当該装置の導入を予定している．
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